日常 | 文字数: 1432 | コメント: 0

綿毛リアリズム

貴方が描く現実が、私にとっての幻想でしか無いように貴方と私は共存できない。 そんなリアルが、私を外側から朽ちさせていく。  「貴方が思う私でありたい」と、私の心は囁くのだけれどいつの日からか其の声すら聞こえなくなった。 貴方の描く現実に、いつからか私は「すごいなあ・・・」と感心するだけで支えることを忘れるようになっていた。 強くなりつづける貴方を見ていて、どんどん離れていくなあとも感じていた。 当の本人である貴方が言うには「君とずっと一緒に居るには必要な事だ。」とか、「全然成長なんかしていない。」なんて言うけど全然違うよ。 だって、成績トップにはなるしネット界隈でいい意味での有名人にも為っちゃうんだから。 おまけに、世界をひっくり返す為だとか言って色々と準備し始めてるでしょ。 私は、ただ貴方と変わらない日々を楽しみたかっただけなのに。 なんで、私の気持ちに叛して君は私のためにと行動するのだろう。 まぁ、私なんかが彼の行動を阻もうと茶々を入れるのは不粋だって事も分ってるし、彼に知らないことなんかない。 ・・・けど、偶には私とお喋りして欲しいな。 前は、「なにしてる?」とか「麻雀しよう」とか誘ってくれたのに、何で何も言わなく為っちゃったんだろう。 もしかして、私から言われるの待ってるのかな。 でも、無理だよね。だって、私みたいな底辺が彼の為そうとしてることの邪魔しちゃいけないんだもん。 分ってるよ、君とは住む世界が違うんだって。 だから、分ってたんだ。もう君と話せなくなることも、君が私から離れることも。全部全部。 私は、此れまでずっと彼を眺めていたから彼の調子が落ち込んでいるときなど直ぐ察っすることが出来るようにとなっていた。 そんな時、いつも話しかけられたら彼はきっと嫌がるだろうから様子を見ながらその日も伺ったんだ。 「最近元気ないけど大丈夫?」 彼は精悍な表情で私に冷たく告げる。 「いや、全然大丈夫だよ。」 私の心にチクッと其の言葉が刺さった。 「・・・そっか。」 「うん。君は元気?」 「・・・うん。普通かな」 「なら良いんだ。君さえ元気で居れば僕はそれで。」 そんなのうそじゃん・・・だって私が元気で居ても最近元気なかったもん。 「うそつき。」 言ってしまった、という後悔と同時に私は彼を見ないようにとそっぽ向いた。 暫く、沈黙が続いた。 ごめん、ごめん、と言い出そうと心の準備をさせていたとき、彼の言葉が其れを遮った。 「君はもう此処にいるべきでは無い。」 私は混乱した。 何故、そんな話しになったのかも分らないし何で別れの言葉なのかも分らない。 ただ分ることは貴方が私から離れようとしたいという事だけだった。 (分ってたから、もっと早くにそう言ってよ!) (何で、君の為とか全部そんな嘘つくんだよ。) 言いたいことは沢山あったけど、全部涙となって流れ落ちた。 彼は、私を寂しそうな顔で見つめると「さようなら。」と、そう言った。 どうすれば良かっただろう。分らない。 けれど、分ったのは君が見ている現実と私が見ている現実が一致しないということ。 私は貴方を見ていたけど、貴方はいつしか私じゃ無くて空を見上げたということ。 私離れができて、良かったじゃん。 私は、もう少し貴方と過ごした日々に縋らせてもらうね。ありがと。

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