日常 | 文字数: 1476 | コメント: 0

Divine ale #1

私は何故生きているのだろう。私は何故産まれたのだろう。そんなの簡単で分かっている。両親が私を望んだからだ。詳しく言えば、望んでない可能性も否めないのだが何者かが私を作り産んだのだろう。けれど、私には分からない。何故、こんな世界に産み落とされたのかが。こんな世界に産み落とされるくらいなら、いっそ奈落に此の身を投げ落としてやりたい。若しくは、深海に此の身を沈めてやりたい。私を楽にしてあげたい。 朝田真智は、辛辣な表情でマウスをクリックしてメモ帳を閉じると、意を決したように椅子から立ち上がった。真智は振り返ると、クローゼットに向かって黙々とした表情で歩いた。真智はクローゼットを開けると、模の様に着ている黒のパーカーを取り出した。それをシャツの上から羽織ると机の上に置いてある財布を拾った。財布をポッケの中に閉まうとドアへヅカヅカと向かった。ドアノブへ手をかけた時、一度真智の行動が止まった。 本当に私、終わっちゃうんだな。 重苦しい表情で、ドアを開けると一目散に外へ飛び出した。梅雨のせいか、天気は雨だった。真智は気にせずといった表情でパーカーの帽子を深く被ると、また歩き出した。トボトボと、歩いていると突然声をかけられた。 『ねえ、ちょっといい?』 慌てて顔を上げて、顔を確認すると綺麗で可愛めの軟派な男が傘をさして立っていた。 『なな、なんですか?』 男は、すかさず上げられた私の顔を覗き込むと、嘲笑交じりでこう言った。 『おねーさん、ブスだねえ』 不思議と嫌味に聞こえなかった。呆然としていると、男は続けた。 『今にも、死にそうな顔してる。もしかして、この先の海で死ぬつもりだった?』 真智は考えもなしに慌てて首を横にブンブンと振って先へ進もうと足を前に運んだ。 男の顔も見ずにと過ぎ去る時、思わず立ち止まってしまう一言を言われた。 『今死ぬなら、僕に君を殺させてよ。』 私は思わず声を上げてしまっていた。 『ほぇ?』 余りにも、返事がマヌケだったのか男は私の顔を見ない儘笑っていた。 改めて、男が此方を見ると改めてこう告げられた。 『僕が、殺してあげようか?』 頭よりも口が先に動いた。 『お願いします。』 私は言ってしまったという懺悔と、もう繕うのは止めよう面倒くさいしと心を解放したいという挟撃の念で圧伏させられていた。 真智がモジモジして顔を伏せていると、男は愉快そうにこう言った。 『ハハッ、おっけ。任せてブスちゃん』 私は漫画、アニメの影響受けすぎだろ、と若干ひきつつも彼の持つ不思議な魅力に惹かれていた。 『ところで、君の名前は?』 彼が尋ねるので、私はまたも頭よりも先に口が動いた。 『朝田真智です。』 『へえ、年齢は?』 『19』 『大学生?』 『…一応、そう…ですね』 『一応ってことは何?行ってないの?』 『最近は…行けて…んッ…ないです』 喋り慣れてないせいか、要所要所詰まってしまう。なんと情けない姿だろう。 『なるほどな。取り敢えず場所変えようか。』 そう言うと彼は、踵を返してこう言った。 『僕に、付いてきてください。行き先は僕の楽園、そして貴方の墓場となるかもしれませんね。』 私は思わず声をかけた。 『本当に私を殺すつもりですか?』 彼は、不気味な笑顔で 『冗談さ』 と言ったが、私にはハッキリと 『勿論だよ』 と、そう聞こえた気がした。 そして、私は未だ何も知らない彼の背中につられるまま歩を進めた。

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