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紗由理の変異

 諒(電話)『どうだ?血清は見つかったか?』

 麗奈「あなたの母親と虫に襲われたのよ。何で言ってくれなかったの?」

 私はキレ気味で諒に問いかけた。

 諒(電話)『…悪かったよ。で、血清は?』

 麗奈「いや、まだよ。でも作る材料ならわかったわ。」

 麗奈「D型被験体とかってやつの…、頭と腕らしいわ。」

 先程アタッシュケースに入っていた、血清の作り方を私は諒に話した。

 諒(電話)『頭?頭なら俺が持ってたと思う。』

 麗奈「本当に?」

 その被験体の頭は、どうやら諒が先に持ってたらしい。

 諒(電話)『でも腕の方はわからない。旧館は全部調べたか?』

 麗奈「いや、まだよ。2階を調べてみるわ。」

 諒(電話)『それじゃあ、探してみてくれ。見つけたらトレーラーで会おう。』

 諒がそう言うと、電話を切った。

 D型被験体の腕…。簡単には見つけられなそうだけど…。


 私は紗由理と戦った所へ戻ってみる。

 ぽっかり穴が開いた床下を覗くと、先程の黒い液がなくなっていた。

 それに、紗由理の姿もない。

ガサゴソ…!

 穴の中に空洞があり、中に何かが動いている。

 麗奈「今のは何…?何かいる…?」

 恐る恐る空洞に足を踏み入れた。


 奥まで進むと、地上へ通じる梯子があった。

 上ってみると、外に出た。

 私はそこから、まだ調べていないグリーンハウスへ行った。

 扉は開いたままだ。


 私は警戒心を持ちながら、グリーンハウスの中の階段を上る。

 すると…。


ドガシャアッ!

 麗奈「…!!」

 紗由理「ホラ、私トオイデナサイナ。モウ終ワラセヨウジャアリマセンカ…!」

 窓から、様子がおかしい紗由理が突き破って出てきた。

 しかも、手足や髪が尋常じゃないくらい長くなっている。

 声もあの美声から醜い声と変わっていた。

 気味が悪い。

 あの空洞にいたのは、もしかすると紗由理かもしれない。

 紗由理は私の足を掴み、引きずり込もうとした。

 私は抵抗し、紗由理の顔面(目や口の辺り)にハンドガンを撃ち抜いた。


 何発か撃つと、紗由理は怯み、手を離した。

 すると外へ飛び出し、どこかに行ってしまった。


 紗由理がいない隙に、私はグリーンハウスの中を調べた。

 息を弾ませながら、私は隅から隅まで探索する。

 紗由理「捕エチャイマスヨ!」

 麗奈「…!!」

 しばらく経った途端、紗由理が天井から降りてきた。

 四つん這いにもなった紗由理は、まるで蜘蛛のような姿だった。

 私は攻めまくる…!


 紗由理の声『ヴヴゥ″ゥ″…!』

 奥から紗由理が呻く声が聞こえてくる。

 そっと私は近付いてみると…。

 麗奈「…!」

 紗由理が壁に張り付き、何かを産もうとしていた。

 壁に張り付いた物体の中から出てきたのは、旧館にいた大きな虫だった。

 もしかしてあの虫は、紗由理が産卵させたの…?

 そうとしか、思いようがなかった。


 長時間長い戦いが続いていく。

 バーナーで燃やすに続いて、ハンドガンを撃ち抜く。

 それを何回も繰り返した。

 そして…。

 紗由理「ヴア″ァ″ァ″ァ″ァ″ア″ッ!」

パキパキパキ…!

 雄叫びを上げた紗由理に、白い塊が紗由理を包み込む。

カラカラ…

 そして、紗由理は無惨に粉々になった。

 脩司も倒し、紗由理も倒した。

 水島家の両親は、共にあの世へ逝かせた。

 麗奈「…もう生き返ってこないで。」

 私はそう告げる。

 こんな奴はあの世で暮らせばいいものの、私はそう思い込んで悲しくなりそうになった。

 …自業自得よ。


 粉状になった紗由理の中から、ランタンを拾った。

 これは多分、天秤に使うのだろうと思い込み、私はさっさとそこへ向かった。

 もしかすると、天秤の先の部屋に、D型被験体の腕があるかもしれない。

 それを予想して、私は颯爽と歩き始めた…。

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