三題噺 | 文字数: 1394 | コメント: 0

三題噺

神様はいるのだろうか?いるとしたらどんな奴なんだろう?

ここに一人不幸な人間がいる仮にAという名前を付けよう。
さて彼はこれから『出会い』を得て『喪失』を経験し『感情』を手に入れるだろう。
親切な僕は、発想力の無い君のために最後の感情の部分を埋めてあげよう。
それ以外は君が考えるんだ、彼は何に出会う?
「Aは悲しみに出会う」
おや最初にから『感情』に出会うんだね、なかなかヒネクレ者じゃないか気に入った。
それで彼は何を失うことを経験するんだい?
「Aは血を失う」
悲劇だね。では僕が彼が手に入れる『感情』を入れてあげよう。
「Aは喜びを手に入れる」
でないとAが可愛そうじゃないか。どれどれ話はどうなるかな?

Aが道を歩いていると前から病気のおじいさんが現れた。
Aはいずれ僕もああして年をとり、病気になり死ぬと思うと悲しくなってしまった。
Aは生きることに絶望して、いまなら幸せのままに死ねると手首にナイフを押し当てて思い切り引いた。
Aは安らかに喜びと安楽を手に入れた。はたから見れば気が狂って死んだように見えただけだが。
老人は笑ってそれをみていた。

アッハッハ、愉快だね。もう少しこれで遊べそうだ。
君はどうだい、そうかよかった。では次の話だ
ここには一人の幸福な人間がいる。仮にBと名付けよう彼はこれから、
『出会い』を経験し、『喪失を』手に入れ、『感情』を得るだろう。
今回も感情は私が入れよう。さぁ自由にBに出会いと喪失を与えたまえ。
「Bはこの上ない運と愛と安らぎを手に入れる」
強欲だ。まぁ無理もないがね、それでBはなにを失う。
「Bを傷つけるすべての出会い捨てる」
なるほどそれでBは幸せになるかな?僕が感情を入れよう。
「Bは喜びを得るだろう」
これで完璧さ君の思い通りだ。さぁどうなるかな?

Bが道を歩いていると彼を愛してくれる人とであった。
Bはその人の歩みの中で安らぎと愛を手に入れた。
Bはそれから不思議と自分が傷つかずに歩むべき道がわかった。
Bは迷わず疑わず傷つかない道を選び歩いてゆく、
時がきてBは寿命を迎える。彼はこの上なく喜びの中にあった。
彼を傷つけたであろう、かつて出会った愛してくれた人と道を分かち、
当たり障りのないものだけを選び取った。
彼は愛が与えてくれる傷を知らずに平穏に幸福に死んだ。
彼を知るものは彼をこの上なく不幸な人間であると笑った。

アッハッハ、なんだその顔は、僕らがいくら人を幸福にしようとしても、不幸にしようとしてもどうしようもないのさ、
君が「神」であり、願われてそれをかなえたいと思っても。罰を与えたくても。
彼らは勝手に幸福になるし、勝手に不幸になる。
何と出会っても、何を失っても、感情すら評価によって上書きされる。
僕らはただ見守るだけしかできないということさ。
えっ?僕?今更だね。僕は彼らが歩く道であり、その軌跡であり。まぁ運命というやつさ。

さて何の話だっけ?そうだ神はいるのかって話だったね。
その答えは君しだいだけど、一つだけわかることがある。
神様に僕が与える『感情』はないだろうね。神様が情をかけても意味なんてなさないからね。

「ああ無情」

正しく、それが運命さ。

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