3つのメッセージ
ずっと前に「淋しいおさかな」という戯曲集を持っていた。その頃の仲間なら皆知っている本であるだろうが、覚えているのはタイトルだけで、内容はさっぱり覚えていない。
その頃の仲間が皆おお大人になっていて、病気持ちが多い。
その仲間の一人で今だ現役という彼から年賀状が届く。カラダに気をつけてね!と一言添えてある。なるほど我々にふさわしい愛のある言葉だ。
私はみんなのなかでも一つか二つ若いし、丈夫なのでそのうち落ち葉が落ちるように皆の訃報をきくことになるのだろうか...
☆☆☆
私にはもう一人兄弟がいる。
川を隔てた家に住んでいたとっちゃんだ。とっちゃんのお母さんはあふれる笑顔と豊満な乳房を持っていて、乳の出が悪かった母が貰い乳をしたらしい。とっちゃんと私は乳兄弟だ。
とっちゃんと私は小5から中学までは一緒の学校だった。でも特に話したこともなかったので、無口でがっしりした、スポーツマンであるという印象しかない。
彼の話し上手な次兄さんによると、そのとっちゃんは高校を卒業してから、何を思ったかフランスに渡り、アラン・ドロンも来店するような有名日本料理店で雇われ支配人をしていたとのことだ。国際結婚を2度もしたらしい。
今は第2の人生を画家としてパリで、日本人にしか描けない洋画を描いている。
彼も足に違和感を感じながら生活しているという。
パリのとっちゃんは少し固いパンに美味しいソースをつけたりして、今日も絵筆を握っているだろう。
そんな彼が、お互い健康には注意しようとメッセージをくれた。
☆☆☆
定年後は東北に住む元同僚から、ラインが来た。今日は来客もないのでネコのウーちゃんと暖炉の前でゆっくりしていると、画像を送ってくれた。
私もうちのネコすけの画像を送る。私たちはネコ友達だ。
自分の重ねた歳のことで嘆く私に、「ウーちゃんは10才になりましたし、2歳下の自分ももうすぐ大台だから一緒ですよ」と言ってくれる。
彼はこうして相手の気持ちを和らげてくれる、美味しいお雑煮かお汁粉みたいな人だ。
彼は今日もねこちゃんの温もりに包まれて過ごしていることだろう。
☆☆☆
年賀状や年賀メールで私のことを一瞬でも思い出してくれる人がいるのは本当にうれしい。
コメント
なかまくら - 2025-02-09 12:22
メッセージのやり取りの仕方はそれぞれ違っていて、それぞれが一番、負担にならない方法で、メッセージを送ってきているのかもしれませんね。それがどんな形であれ、それを受け取ったり、またお返事したり・・・、そういう柔らかくいろんな人と繋がっていられるような、余裕とかそういうものが感じられて、素敵な「私」を見せてもらったなあというお話でした。
作者さんは、皆さんおっしゃるように、ほわみさんと予想です!
PN:はたらかないサイドン
けにを - 2025-01-27 17:42
何だか、沁みるお話だ。
特に、
丈夫なのでそのうち落ち葉が落ちるように皆の訃報をきくことになるのだろうか..
のくだりは、
悲しい。
不老不死とかになると、ずっとこんな思いしなくてはならないから、ほどほどで逝きたいね。
さて、年賀状は廃れつつあるけど、こう言った旧友や親しい人とのやり取りは年に一回はしたいね。面倒に感じる人も多そうだけど。せめて年一。
乳兄弟って初めて聞いたかも。しかし、出ない時は助かるかも?こういった助け合いも昭和ならでは、今の時代にはあまり無いかも。
このしんみり沁み沁みのお味、味付けは、ほわみさんだね❗️
茶屋 - 2025-01-26 22:55
誰かとの繋がりがある。その全てが物語となっていくのかなと思いました。
予想はのんびりしたいと思います。
ヒヒヒ - 2025-01-26 22:21
戯曲集、乳兄弟、猫友達・・・・・・いろいろなつながり方があるんだなあと思いました。
どれも素敵な関係ですね。これはほわみさんだと思います。