日常 | 文字数: 771 | コメント: 0

天空と大地に縛られた深海魚

ザーザー
海は波を打ち、光を乱反射させてキラキラ輝いていた。
中には魚がいる。僕にはわかる。
けれど、どんな暮らしをしているか僕にはわからない。
また、海底には何が眠っているのか僕にはわからない。
インターネットで調べても、面白みのない出鱈目しか書かれていない。
なぜ、出鱈目と思うかって僕が見たことのない話だからだ。
だから、今日僕はここに来た。
僕は、元来金づちだ。
故に、海底まで潜ることができる。
どちらかといえば、僕は深海魚だ。
浅瀬の際では、息をすることが難しい。
深海で息をする僕と、浅瀬で息をする彼らが共存するのは難しい。
どちらかが、損をする。
その損を思いやることが、浅瀬のものには理解できない。
何故なら、深海魚ではないからだ。
まぁ、いいや。

「よし、僕の居るべきところに帰るとするか。」
堤防まで歩いて、あと一歩で海というところまで来た。
自分の鼓動が大波打っているのが、わかった。
様々な記憶を必死に蘇えらせようとしたが、僕には様々な記憶はなかった。
僕の道には、誰も存在しない。此れからも、登場しないとは限らないけれど。
僕が生きることは、僕を苦しめているだけだと分かった。
何で苦しむかって、此処は浅瀬の魚が生きやすい大河だからだ。
僕が啓発したところで、其れは深海の勧めだ。
浅瀬の勧めとは異なる。彼らが浅瀬の生き物であるなら、其れに見合った勧めを貰うべきだ。
だって、過去に勧めたことで死なせてしまった魚がいるんだから。
もう、名前も覚えてない。出来の悪い魚だったな。

僕は今一度、たっている堤防から海を眺めた。
綺麗だ。
僕は気が付くと、海に沈んでいた。
ゴボゴボッ・・・。

こうして僕は深海に消えた。すごく心地が良かった。

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