恋愛 | 文字数: 701 | コメント: 0

風さらら

ちょっとした予感。お昼休み、南校舎三階、階段の踊り場で待っていれば会えるかもしれない。 超特急でお弁当を食べ終わると席を蹴って、一気に階段を駆け上がる。 フワッと両足を投げ出して、ペタンと床に座り込む。食べたばかりの胃袋がびっくりしている。 高い窓から入り込む風が気持ち良い。スーッとミントの葉を噛んだような爽快感。顎から髪へと抜けていく。 「スカートが汚れるよ」突然、上から声がした。振り向いて見上げると、階段の上から天ちゃんのニカっとした笑い。 「あんまり綺麗な笑顔じゃない」私が言うと「何だよ空から降る最高の笑顔だろ」って更にゲラゲラと笑う。 だからその笑い方!…まあいいけどさ。 「待ってたの」「俺を?用事?」「ううん、予感」 立ち上がり、スカートの裾をポンポン払う。あっまた風が抜けていく。気持ちいいね。 背伸びして、二人並んで窓から身を乗り出して外をのぞく。 「見て、お昼休みなのに校庭を走ってる」さらりと私の髪が風に流れて天ちゃんの頬に当たる。 ちょっとドキドキとかしてない?あれ?言わないの?いい匂いだなあって。 首を傾げて天ちゃんの顔を覗き込むと、眼をつぶったまま、まるで空を旅しているみたいな顔つき。 「もしかして、今どっか飛んでる?」そう聞くと、薄目を開けて照れくさそうな横顔。あっこの表情好きかも。 「よくわかったな。ここは南太平洋の上だよ。空も海も風も真っ蒼だ」 「わあ、私も今から行く」 目を閉じる。二人で蒼い海の上を飛ぶ。飛ぶ。風に乗り、空を駆け、どこまでだって行ける。きっと、ずうっと。 あっ遠くで午後のチャイムが鳴ってる…

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