昔即興お代小説として書いた作品ですが投稿させていただきます。当時のお代はランキングでした。
「らんきんぐとな?」
拙者は隣にいる牧ノ助に聞いてみた。
ここは江戸城下にある、一店の茶店。
大事な話があるからと江戸城に勤めてる友から誘われた場所だ。
最近は黒船やら薩摩の侍など色々と世間が物騒だ。
「おう。なにやら異国でいう殿様らしい。わが国の文字で書くと乱王」
「あっちこっちに居る者をすべる物、その頂点は江戸の将軍様より上位にいるらしい」
「口を慎め! 誰か聴いてるがわからん!」
「まぁこのご時世だ。大丈夫だろうさ」
「何故拙者に話す。牧ノ助」
日差しが強い。浅黒い横顔を睨みつける。
「まぁ怒るな。刃矢(とうや)先月、長崎から来た乱王が行方不明になった。江戸城に上がる前だ」
「なんと!」
驚きのあまり立ち上がる。町娘や茶娘がこっちをみてるがそれ所じゃない。
「そこで刃矢。お主にも捜索の手伝いをしてもらいたい」
「しかし……」
突然、友の牧ノ助は土下座をする。
「すまん。今は猫の手でも借りたい」
友の土下座なと見たくも無い。
「顔を上げてくれ、拙者に出来る事なら力を貸す」
「力を貸してくれるか……」
「仕方がないだろう。それでその武人の姿は……」
「拙者も家老から上役へさらに中役へと伝わってきたのしかしらないのだが」
「ええい、さっさと話せ」
「一つ鋭い爪を持っているらしい」
「ふむ。暗武の一つか」
「一つ夜眼が聞くらしい」
「ますます暗殺が得意そうだな」
「一つ屋根なども簡単に登る」
「乱王とは伊賀か甲賀の物か?」
「そして名前は黒の助」
「いや違う。それでいて下町では女中から城では大奥の中まで人気があるらしい」
「役者も顔負けか……しかしそんな人間は本当にいるのか? らんきんぐ。乱王と書いた奴は、いや乱王とは通称で黒の助といったか」
「それを探し出すのが我々の仕事だ」
「成功報酬は小判5枚。成功しなくてもお主には一両は渡せる」
「なぬ!」
小判を盗めば首が飛ぶ、そんなご時世に5枚とは幕府は本気なのだろうか。
「実は家老はその人気を使って人々をまとめるお考えらしい」
「では早速。聞き込んでくる」
「すまぬ。なるべく隠密にしてくれ」
人に頼んでおいて、さらに人を探すのに隠密も何もあったもんじゃない。思わずあいた口が閉まらなくなりそうだったが、それには答えず茶店を後にする。
百姓。酒屋。米屋。丁稚小僧に博打打ちにまでこそっと聞いてみたが一向に手がかりは見つからない。
探索から三日目、既に諦めかけて居た所に牧ノ助からの手紙が届く。
手紙に書かれた場所は三日前に会った茶店。
俺は牧ノ助に会うなり土下座をする。
「すまぬ。何一つ……」
「よせ。友の土下座などみたくはない」
「しかし……」
「刃矢。実はらんきんぐは見つかった」
「真か!何故にしらせなかった。しかし……これで反勢力にも勝てるのだな!」
俺達二人を茶娘や通行人が見てるが、またあの二人かと思って直ぐに散らばる。
「実は……」
浅黒い顔で嫌そうな表情を作る。
「こいつだったのだよ。絵を見せる」
懐から一枚の半紙を取り出す。
その半紙には将軍様が座っている。
「将軍様の絵じゃないか。して、どこに?」
「ここだ……」
「らんきんぐ一位の黒の助だ。らんきんぐとは物事の順位だったらしい」
将軍様の膝元に一匹の猫が書かれている。
「なるほど……鋭い爪を持って夜眼も聞く、しかも人気物ときた」
自分の声が段々と低くなっていくのかわかる。
茶店の娘や見物人は何時もの光景がはじまったのかとさっして物を片付ける。
「牧ノ助……お前というやつは毎度毎度……! 切る!」
「まて。刃矢今回のは詳細を聞かなかったお前も悪い」
俺の刃を避けつつ逃げ惑う。
「たわけ! 詳細もなにも猫とはきいとらんぞ!」
俺は牧ノ助を追いかけて走り去る。
町の人々は何時もの日常だわ と微笑むのであった。
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