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稲Qu4li茶

 麻田幸村は、椅子にダラリと座って虚ろな眼差しで床を見つめていた。

俺の毎日にどれ位の価値があるだろうか。
同じ事をしては、同じ事に悩まされる。
そんな日々を送っていることにも亦悩まされている日々だ。
要するに、悪循環って奴だ。
そんな悪循環に抗っていた自分もいたさ。
けれど、俺は気付いた。俺は俺であるがために、悩まされ続けるって事に。
要するに俺を救う術は、俺を殺すことなんだ。
俺が俺を救いたいならば、殺せばいい。
殺して楽にはなれずとも、今が続くよりはずっと良いことだ。
本当に、価値のない日々が続いた。
過去を悔やむ日々や、過去に囚われる日々。
未来に希望を抱く日々や、その希望を自らが捨て続ける日々。
現在と向き合わない日々や、現在に不満を募らせ続ける日々。
もう何もかもが、俺には必要のない日々だった。
俺が必要とする日々は、いつも頭の中にしか存在してなかった。
其れが、実現することのない日々だと俺は思わない。
だから、今も生きている。
だがしかし、生きてるとそんな絵空事を前に人生って奴は送れないんだ。
其処が俺の弱さなんだろうな。
それが故に、俺を殺さねば救われないという裏付けにもなっている。
けれど、どうせなら一度くらい本気で人生を生きたいという願いもあって自殺を躊躇させている。
明日、会社へ行って辞表を届けることができたら俺は少しでも気が楽になるだろうか。
いや、違う。理由はないが確実にその道は間違いだ、と本能がそう言っている。
本当につかれた。余計なことを考えすぎてしまうばかりで、十分な睡眠すらとれない。
余計なことと分かっていながら、俺の頭は回転を止めない。
睡眠導入剤、なども幾つか試したがウトウトしてボヤーッとするだけで、睡眠をすることは出来なかった。
精神科医や、メンタルカウンセラーと話しても何一つ改善された例しがなかった。
何故なら、彼らは幼稚すぎるんだ。
”俺の思考レベルに至ってない。”
そう思ってしまう俺をまた責めてしまうので返って逆効果なだけなんだ。
友達に話してもそうさ。何故、そんな簡単に生きられるんだ、お前らは。と思わざるを得ない。
そう、俺は此の現在の世界に適応出来ない奴なんだ。
何かを知ってしまうことで行動が制限されると知っていたならば、僕は知ろうとしなかっただろう。
本当の良知が何であるか知ったのは、色々と知ってからのことだった。
手遅れなんだ、要するに。俺の性格である以上、この世界に順応することは出来ない。
俺を変えるために、いろいろな努力をした時期もあったさ。
その努力の結果、得れたモノは幾つかの精神疾患だった。
何故、そうなったかというと俺が俺であったからだ。
俺は俺を変えるためにと行動したのが俺であるならば、俺は俺によって縛られたまま変えるハメになる。
俺を本当に変えたいのなら、クスリ漬けにでもしないと変えることは出来ないのではないだろうか。
むろん、クスリ漬けとなった未来の俺を現在の俺は容認できないので、行動に移さないのだがね。
・・・本当、つかれたなあ。
なんで、毎日毎日こんな事に考えを巡らせねばならないのだろうか。
誰か俺をいやしてくれる天使様は現れないのだろうか。
現れないとも、言い切れないが俺が俺である限り其れを拒むだろうから現れなくても良いな。
此れまでもそうであったじゃないか。

もう、いいや。死んでしまおう。
俺を楽にさせよう。
考えるな、死にたいという煩悩に従えばいい。
死にたくないという本能に反抗するんだ。

幸村はノロリと、椅子から立ち上がると周りを見渡してPCの置いてあるデスクの方へ向かった。
PCに接続されている7mのLANケーブルを徐ろに引き抜くと、その対となる端子が接続されているルーターからも引き抜いた。
そして、テキパキと例の其れを部屋の真ん中に作ると幸村は其の下に先ほど座っていた椅子を用意した。
幸村は、椅子に乗ると1つ深呼吸をした。
其れを頭にかぶせる際、莫大な量の記憶が幸村の頭を駆け巡った。
被せ終わると、ややぜんそく気味になりながらも、幸村は空へと向かってジャンプした。

ギシッシッシッ

「ほふっ・・・あがっ・・ああああああ」

シッシッシッ

「は・・は・・・は・・は・・・ぐ、ぐぐ」

バアンッ

「がはっ、はぁはぁ、ふーはーふーはー、ごほっげほっおえっ・・」

・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・


ったくやってられない。つかれた。

けど、こんな気分は悪くない。
何があっても生き延びてやる。

幸村は立ち上がると、よろよろしながら扉の外へ出た。
残された部屋には、幸村の雫が床の色と混ざったのか飴色に輝いていた。

















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