ただいまマイクのテスト中
長机に近づいてきた2人の男は、いそいそと座った。
そのうちの一人が、そこに置かれていたマイクを手に取ってしゃべりだす。
「てすてす。」
何度か、叩いたりもしてみる。トントン、という音が会場に響く。
「あ、あ・・・ただいま、マイクのテスト中・・・ただいま、マイクのテスト中。」
その音を背景に、一人の男が、机と椅子をもって、中央の机のところにやってくる。
続いて、ゆっくりと問題用紙を広げて、回答を開始する。
「さて、始まりましたが、どうですか、解説のBさん。」
先ほどまで、マイクのテストをしていた男が、話題を隣の男に振る。すると、したり顔で、隣の男もスタンドに備え付けられたマイクで話し始める。
「そうですね、ここのところ、調子がいまいち上がってきていないマイク選手ですが、初めは喝采をもって迎え入れられたわけですから、今一度、あの頃を思い出して頑張ってもらいたいところですね。」
「なるほど。その、活躍のポイントはどこにあると思いますか?」
「それはやはり、サウンドにありますね。」
「なるほどー。おっと、ここでマイク選手、消しゴムを落としました!」
地面に垂直に挙げられた手はしかし、誰にも気づかれない。
「手を挙げて、先生の注意を向けようとしていますね。」
「しかし、先生、なかなか気づかない!」
「昨シーズンまでのデータによれば、マイク選手は、S・H・Y・・・シャイ! だと、ありますからね。これは痛い、時間ロスです。」
「ここで、先生が、気づいた!! ゆっくりとした動作で向かってきます!」
「おい、ロフォン! そういう時は早く言いなさい。」
「おっと、ここで! 指導が入ったー!!」
「「」「指導』が3回入ると、反則負けになるので注意が必要です!
先生がその過程を知らないというのはよくあることだが、試験を一刻も早く再開するために、男は黙ってうなづいた。
「おっと、ここで、情報が入ってきました。マイク選手はマイケル・ロフォンというようです。」
「まさかそのままの名前とは」
どこからともなく、合唱隊が出てきて、歌いだす。
「マイクはね、マイクロフォンっていうんだ、ほんとはね。だけどちっさいから、じぶんのこと、マイクっていうんだね。かわいいね、マイク♪(繰り返し)」
「応援歌ですかね~。」
「あっと、ここで、マイク選手が天を仰ぎ始めた!」
「これはいけませんね、集中できていません。」
実況の2人は、マイクの悪い癖だなんだと、言い立てる。
そのとき、先生が、のっしと立ち上がる。
「マイク! いけ! そこだ! マイク! 先生は、応援しているぞ! 一緒に、2年生に進級しような!! あ~あ~~♪ マイク~~♪ マイク~~♪」
などと、先生は歌いだす! 合唱隊との不協和音が会場に響き渡るなか、マイクは問題を解き続けていく!
そのとき、目の前をペットボトルが水平に横切っていく。それをすかさずキャッチするマイク。
そして、キャップを取ると、ペットボトルの水を飲み始める。
「ここでエクストラチャレンジ! 給水です!」
「500mL、一本勝負、ということですね。いい飲みっぷりです。」
「トイレは大丈夫でしょうか?」
「後半の膀胱との戦いにも注目したいところです。」
「それは倫理的に大丈夫なのでしょうか?」
「おっと、飲み終わったようですが・・・なにやら様子がおかしいです。」
「こちらをじっと見ていますね~~。何か言いたげです。」
「ただいまマイクのテスト中です!」 マイクは叫んだ。
コメント
なかまくら - 2025-02-26 21:54
>けにおさん
感想ありがとうございます。
2つは別のチャンネルで行われていたと思いきや、実は全部聞こえていた、ということなのですが、オチとしては弱いですね。
けにを - 2025-02-24 09:48
マイクさんが進級のテストを受けてるから、マイクのテスト中ですか!
でんでろさんを彷彿とさせるダジャレ作品ですね!?
最後は、うるさい、邪魔するな、静かにしろ、集中できないだろ!
との怒りから、マイクのテスト中だぞ!、と叫んだ訳ですね!
これだけ邪魔されると、誰でも集中できないな。
逆に、これだけの邪魔をされても集中することができたなら、すごい能力だと思います。
なかまくら - 2025-02-23 23:15
>ヒヒヒさん
感想ありがとうございます。一発ネタなので、発覚した後に、どうやって着地するかが一番難しいな、と思いました笑
こういうのはでんでろさんとかは得意なんだと思いますが、引き出し、広げたいな、と思って書いてみました!
ヒヒヒ - 2025-02-23 20:02
なるほど、マイク・ロフォンのテストのダブルミーイング!
笑いました。面白かったです。
なかまくら - 2025-02-22 18:28
勢いで書きました・・・・ええ。