日常 | 文字数: 596 | コメント: 0

ウソツキな子

ウソをつくのは、悪いことだ。
ウソをつく子は、悪い子だ。

* * *

ママは忙しい人だ。女手ひとつでわたしを育ててくれている。わたしは幼いながらに、その大変さが理解できていた。
「マイちゃん、ごめんね。お仕事もう少しかかりそうだから、ご飯先に食べておいてくれる?」
「うん……」
ママの負担を少しでも減らそうと沢山お勉強をした。宿題を早く済ませて、お洗濯とお料理をして。手が空いたときはママが作ってくれるが、そんなときは月に一度あればいいくらいだ。
夜中もお仕事があって、ママはほとんど寝る間もなかった。
「マイちゃん、先に寝ててくれる?ママ、もう少しお仕事があるの。」
「うん……」
頭では理解しているのだ。わたしのためであると。
しかし、それでもわたしは幼かった。忙しいのはわかっているのに、仕事や家事を払いのけて母に甘えたかった。
「……あら?マイちゃん、どうしたの?眠れないの?」
「……オバケ、こわい。」
「……そう。怖いものを見ちゃったのね。おいで、マイちゃん。ママと一緒に寝よう?」
「うん…」
オバケなんて見ていない。怖い思いもしていない。
でも、こう言えばしばらくの間、ママを一人占めできることはわかっていた。
「ママ……」
「なぁに?」
「……大好き。」
「……ママも、マイちゃんが大好きよ。」
あぁ、わたしは悪い子だ。

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