旧同タイトル | 文字数: 1034 | コメント: 0

小さな指輪

ユカとミヤコは今日も仲良し。

* * *

ユカとミヤコがお互いの家に遊びに行くのはいつものこと。今日はミヤコがユカの家に遊びに行っていた。
夢中で遊んでいたが、ふと時計を見るともう16時を過ぎていた。あと1時間でお別れである。
「ずっと一緒にいられたらいいのにね。」
「そうだね。わたしもミヤちゃんとずっと一緒にいたい。」
しかし、お互い別々の家に生まれた以上は、それぞれに帰るべき家がある。一緒にいる時間が楽しければ楽しいほど、その事実に対して2人の幼い心は不満を抱いていた。
「そうだ!ミヤちゃん、こうしよう!」
ユカは何か思いつくと、折り紙をせっせと折り始めた。
「はい!約束の指輪!」
「指輪?」
「そうだよ!大人になったらこれで一緒になろう!」
それは親の真似事。結婚指輪の意味をイマイチ理解していない2人の真剣な約束だった。
「わたしもつくる!」
ミヤコもユカのように作ろうとしたが、なかなか納得のいくものができない。
いつの間にか2人で小さな折り紙の指輪を沢山作り始めた。
気がついたら辺り一面指輪だらけになっており、さすがに紙を使いすぎだと母に叱られた。そしてこっそりお互いの自信作を指にはめて、笑いあった。

* * *

「由香はとうとう一人暮らしかぁ。いいな、いいなー。」
宮子は一人暮らしを始める由香の引越しの手伝いに来ていた。宮子と由香は宮子の引越しにより高校生の時期は離ればなれだったが、由香が宮子と同じ大学に通うことになり、こうして再会することになったのである。
「一人暮らしだって大変なんだよ?料理も掃除も洗濯も、ぜーんぶ自分でしなきゃいけないんだから。少なくともミヤには無理でしょう?」
「ひどい!私だっておにぎりの1つや2つくらい作れるよ!」
「はいはい、ミヤは器用ですね〜。」
「絶対小馬鹿にしてる……」
他愛ない会話をしながら細かい荷物を整理していると、小さな紙の指輪が出てきた。
「あっ、由香ー!これ見て!懐かしいよ!」
「えぇ?……ああ、それね。さすがにずっとはめてはいられないからしまい込んでたんだよね。」
幼い頃、大人になったらずっと一緒にいようという約束の指輪。約束のことを忘れないためなのか、単なる愛着なのか、それは未だに大事にされていた。
「……私もここに引っ越していい?」
「ふふっ、さすがにそれは勘弁。こんな狭い家に2人も住めないよ。」

コメント

コメントはまだありません。