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奇跡

生きていくのは、どうしようもないぐらい時間の無駄だった。 人と会う。くだらない。 CDを聴く。つまらない。 個展に行く。何も響かない。 仕事? いちばんうんざりする時間だ。 ある日、自分では何も期待してないつもりで、近所のカフェが開催する弾き語りのイベントを見に行った。 エレキベースを抱えて弾き語りをしている青年が出演していた。 いいステージだった。 僕は初めて時間を愛おしいと思えた。 物販でCDを買った。 悲しい歌ばかりが収録されていたが、ベースの響きが柔らかかった。 いいエンジニアリングのCDだったが、録音では物足りないところもあった。 もう一度、生で彼の音を聞きたかった。 しかし、出演情報を告知している彼のSNSが更新されることはなかった。 彼が病没したと知ったのは、五年後のことだった。

コメント

あさくら
- 2025-09-24 20:38

けにをさんありがとうございます。世界が広くなるほど虚無が深くなる思いです。

あさくら
- 2025-09-24 20:33

なかまくらさん、ありがとうございます。流行らない時代でも心血注いで芸術に向かう全ての人に敬意を感じます。

けにを
- 2025-09-22 08:13

私も最近、刺激がないですねー
長年生きてきたせいか、何をしても、ワクワク、ドキドキ、しないですね。

主人公さんは、やっと時間を愛おしいと思える弾き語りに出会えたのに、その方が病没されるなんて、残念ですね。

私も人生で一度だけ、喫茶店で、弾き語りを聴いたことがあります。味わい深くて、素敵な時間でした。

なかまくら
- 2025-09-20 18:14

彼には時間がなかったんですね。だからこそ、時間を愛おしいと思っている人が伝えようとしているものこそが、時間の愛おしさを伝えてくれたのかもしれません。心の底から思って、それに心血を注ぐような、そういう生き方が流行らない時代の悲しみを感じました。

あさくら
- 2025-09-20 17:27

ヒヒヒさんありがとうございます。情報も音楽も、飽和しているように見えるだけなのかもしれません。

ヒヒヒ
- 2025-09-17 20:28

ああ、無常……。
ウェブにはたくさんの音楽や情報が溢れているのに、
本当に欲しいものはなかなか手に入りませんね。