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始まり

 東京秋葉原。
 人通りが多い中、18歳と16歳の兄妹がいる。
 兄の名は、「高梨 來斗(たかなし らいと)」。
 針葉樹の近くに寄り掛かり、携帯を弄っていた。
 「お兄ちゃーん!」
 少女の声が聞こえた。
 少女は來斗の妹、「智尋(ちひろ)」。
 來斗は妹の智尋と待ち合わせをしていた。
 「ごめんね、遅くなって…。」
 「別にいいよ。そんじゃあ行くか。」

 來斗と智尋は、仲のいい兄妹。
 智尋は幼少期から來斗に憧れており、來斗のような人間になりたいと意気込んでいた。
 しかし智尋は、長い間ずっといじめられてばかりだった。
 そんな中助けてくれたのは、兄の來斗。
 智尋にとって、來斗はかけがえのない存在だった。
 「そういや智尋。高校生になってから友達できたか?」
 「ううん、まだ全然…。」
 「そうか。まあ、今までの友達とはもう離れ離れになっちまったもんだし、何かあったら、兄ちゃんがサポートするからさ。」
 「うん、ありがとう、お兄ちゃん。」

 「ん…?何だろ、あれ…。」
 街中を歩いていると、多数の人が集まっているのを見かけた。
 「ちょっと行ってみるか。」
 恐る恐る近寄る來斗と智尋。
 その先には…。
 「え…、何あれ…!」
 「どうしてあんなものが…?」
 二人が目にしたのは、蜘蛛のような気味の悪い物体だった。
 近くには警官や自衛隊がいたようで、周りには一般人が集まっていた。
 「物体を確保。これより焼却を始める。」
 自衛隊がバーナーを物体に向け、火をかけると…。

 「グギャアァァァァアッ!!」
 「…!何だ…!?」
 「まだ生きてたのか!」
 物体が突然動き出し、周りがざわめいた。
 どうやら、あの物体は蜘蛛型のクリーチャーだったようだ。
 そして…。

 グシュッ!ザシュッ!!
 「ひぃっ!!」
 「…!きゃあぁぁぁあっ!!」
 近くにいた女性が悲鳴を上げると、人々は一斉に逃げ出した。
 「おいおい、マジかよ…!」
 來斗は呆然と立ち、物体が離れたところで、警官や自衛隊がいたところへと近寄った。
 「これはひでえ…、なんてことを…!」
 來斗が目にしたのは、首を切り落とされた警官と、内臓を抉られた自衛隊の死体だった。
 「お兄…ちゃん…。」
 智尋は怯え、立ち竦んでいた状態でいた。
 確かに、智尋には衝撃的だった。
 智尋は顔色を悪くさせ、今にも嘔吐しそうな状態だった。
 「…とにかくここから離れよう。それから落ち着こう。な?」
 「うん…。」
 胸を抑え、嘔吐を止めようとする智尋。
 二人はその場から、すぐに離れた。

 「う″えぇっ…!ゲホッ…!ゲホッ…!」
 公衆トイレで、智尋は便器に胃液を吐いた。
 女子トイレで仕方なかったが、來斗はそばで智尋の背中を擦った。
 「大丈夫か?」
 「はぁ…、はぁ…、う″ぇっ…!」
 「無理に全部吐かなくていいからな?兄ちゃんが背中擦ってやるから。」
 「ゲホッ…!ゲホッ…!」
 智尋の嘔吐は止まらなかった。
 智尋は気持ち悪さが込み上がり、嘔吐せずにはいられない状態だった。

 「はぁ…、はぁ…。」
 「落ち着いたか?」
 「うん…、何とか…。」
 「また気持ち悪くなったらすぐ言えな。無理だけは絶対にするなよ。」
 「うん…、ありがとう…。」
 智尋の嘔吐は、ようやく止まった。
 口から胃液が垂れ流れているが、落ち着いてはいるようだ。

 「奴は…、まだいるか。」
 蜘蛛型のクリーチャーは、紛れもなく人々を襲っていた。
 女性や小さい子供まで無差別に、無惨に殺し続けるクリーチャー。
 あのクリーチャーがいる限り、街中は地獄だ。
 來斗は握り拳を作り、クリーチャーを虐殺しようと考え込んでいた。
 「お兄ちゃん、どうするの…?」
 「…。」
 「このままじゃ、町中めちゃくちゃ…。私、そんなの嫌だよ…。」
 智尋はすでに怯えていた。
 「…殺すしかないだろう。」
 「…え…?」
 「奴が人を殺しているのならば、逆にこっちが奴を殺せばいいんだ。」
 「殺すって言っても、それができる物なんてどこにあるの…!?」
 「それは…。…!」
 來斗は、向こうの建物に何かがあるのに気が付いた。

 「…これを使おう。」
 「それって…、鉄パイプ…?」
 來斗が手にしたのは、鉄パイプだった。
 どうやら、向こう側に見えた工事現場から取ってきたらしい。
 「でも、そんなんであいつを倒せるのかな…。」
 「一か八かだ。行こう。」
 來斗と智尋は鉄パイプを構え、クリーチャーに近寄った。

 「おらあぁっ!!」
ドゴッ!
 來斗は鉄パイプをクリーチャーに殴り付けた。
「グギャアァァァァアッ!!」
 「ちぃ…!やはり一発じゃ死なないか…!」
 当たり前のように、クリーチャーは鉄パイプに殴られても平気だった。
 「智尋!奴の気を引け!その隙に兄ちゃんが奴を殴る!」
 「え!?私が!?」
 「お前が何もしなかったら、兄ちゃんは死んでもいいのか?」
 「それは…、嫌だよ…。」
 「なら、そうしか道はない。行くぞ!」
 智尋は少々怯え気味だが、もうやるしかなかった。
 今まで來斗に守られた智尋。今は智尋が來斗を守りに行く番だ。

 「お化けさん、こっちだよー!」
 「グ?ギイヤアァァァァアッ!」
 クリーチャーは智尋に気付き、襲う。
 その隙に來斗は後ろから攻撃するが、クリーチャーが速すぎるためなかなか狙えない。
 (くそっ、他に何か方法は…!?)
 「お兄ちゃん、これで本当に倒せるの!?」
 「少し待て!他の方法を考える!」
 クリーチャーの気を引くのはいいが、それだけだは倒せなさそうだ。
 「(…!あれを使うか…!)智尋!針葉樹だ!」
 「…!あれか!」
 來斗はクリーチャーを針葉樹のところまで気を引かせることを、智尋に指示した。

 「てぃっ!」
 ドゴォッ!
 「グギャアァァァァアッ!!」
 智尋はクリーチャーから逃れ、クリーチャーは針葉樹に激突した。
 (やはり弱点は頭か…!)
 クリーチャーは真っ先に直進したため、一度動き出したら曲折できないだろう。
 その一面を見て、來斗は針葉樹に激突させようと作戦を立てていた。
 「ぶっ刺してやる!」
 ザシュッ!!
 「グッ!?ギイィヤアァァァァアッ!!!」
 來斗は鉄パイプをクリーチャーの頭に刺した。
 頭から多量の血が噴き出す。
 「智尋!鉄パイプを奴の頭に刺すんだ!」
 「う、うん!」
 智尋は勇気を出して向かう。
 「てえぇぇぇえいっ!」
 ザシュッ!!
 「グギヤアァァァァアッ!!」
 ダイナミックに刺さり、やがてクリーチャーは倒れた。
 腕が刃じみて苦戦するのかと思いきや、そうでもなかった。

 ドオォーーーンッ!!
 「ひゃっ!」
 「…!何だ!?」
 突然、爆発音が鳴り響いた。
 人々はざわめき、逃げ惑う。
 「こうしちゃいられない。智尋、行くぞ!」
 「う、うん!」
 爆発が起きたところへ向かう來斗と智尋。
 ここから、二人に襲いかかる恐怖が始まる。

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