日常 | 文字数: 960 | コメント: 0

薬局じじい

朝起きると、声がハスキーだった。

前日は歓迎会+2次会スナックで午前様だったので、酒の飲みすぎと歌の歌いすぎかと思った。

ところが、昼を過ぎた頃、ガラガラ声どころか、声がかすれてきた。

晩頃になると、体が熱っぽいし、黄色の痰が出、声がほとんど出なくなった。

スナックのせいじゃない、どうやら僕は風邪を引いたようだ。と自分の体の変調にやっと気づいた。

しかし、もう夜も遅いし病院は開いていない。

出先から車で職場に戻る途中、ちっぽけな薬局を見つけたので入った。

僕「喉が死んでいます。風邪のようです。風邪薬をください。」

僕はかすれた声でそう言った。

薬局のじじい「おやおや、それは大変。風邪にはコレが効くんですよ。」

・粒剤12袋入り【風邪コール】
・栄養ドリンクっぽい【若甦】

じじいは、陳列棚から2つの薬取り出し、僕に見せた。

じじい「今飲んで行きますか? サンプル品をあげましょう。」
 
僕「はい、いただきます」

コップにお湯を注ぎ、風邪コールを入れて、そこに若蘇を入れて、くるくる。

ぐびぐび

飲んでみた。効きそうな薬の味がした。

僕はこの薬局のじじいを、親切なじじい、だと思った。薬をサービスで作ってくれるなんて。やっぱり田舎の人は人が良いなーと。

じじい「では、買われますか?」

僕「はい」

・粒剤12袋入り【風邪コール】1箱
・栄養ドリンクっぽい【若甦】3本セット

じじい「お会計は5000円になります。」

僕「・・・・」

サービスで飲ませてもらったのに、買わない訳にはいかない。しかし、この値段は謎すぎる・・・

僕は首を捻りながらも、5000円札をじじいに渡したが、
「今、正に、きっと、僕は、表面上親切そうなじじいにぼられているのだろうな」
と思った。

生きていて早々ぼられることはない。

この貴重な体験に遭遇でき、僕は緊張とともに少しだけ嬉しかった。

深夜帰宅し、布団に入ったがどうにも寝付けない。

体は弱っているはずなのに? 妙に体全体が高ぶっている・・・変だ? あ!

「薬局で、じじいに一服盛られた若甦のせいか!」

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