日常
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人外魔境
悪夢は刻一刻と迫る。
外界と遮断された部屋、我々は規則正しく並べられた椅子に座ることを指示され、呪われた運命、身に覚えのない罪をあがなうかの如く沈黙していた。
部屋を支配する沈黙は、よく晴れた空、突如として現れた黒雲が不吉な速さで拡がるときの予知夢に似ている。音もなく忍び寄る恐怖が沈黙を助長させている。
奥の部屋は人外魔境
審判は順番に言い渡される。ある者は束の間の猶予に安堵の溜息をつき、運命が尽きた者は奥の部屋へと連行される。年端もいかぬ子どもは何が起こるかも知らずに連れて行かれ、悲鳴を上げた。
宙に浮かべた架空の砂時計を眺めながら、残された時間を数えてみる。
やがて名前が呼ばれ奥の部屋へ連行されるとシャツを脱がされた。内在していた不安と恐怖に凝縮された鋭い針は銀色にきらめき、この身に突き立てられるさまを見つめながら運命を呪う。
このようにして本日、僕はインフルエンザの予防接種を受けたのである。
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