恋愛 | 文字数: 617 | コメント: 0

シャツが裏返し

君は時々シャツを裏返しに着ている。 Tシャツとかトレーナーとか… 「シャツ、裏返ってるよ」と僕が言うと、君はケタケタと笑って気にも留めない。 「どうして裏返しで着るんだよ」 「だってほら、脱いで洗濯して干して、そのまま着ると、こうなっちゃうのよ。それにコートで中見えないし」 エビみたいな仕草をしながら、君が楽しそうに笑うから、僕も笑うしかないなあ。 「冬の海に行きたい」この寒いのに…言い出したのは君の方。 待ち合わせの場所、どうせ君は遅れてくるんだろうし、寒いから自販機で缶コーヒーを買った。 ピピピピピっと大きな音、ラッキー!!当たりでもう一本。 一本を飲みながら、もう一本はポケットに入れて君を待つ。 冬の陽だまりを、白い猫が尻尾をピンと立て、ひらりと横切っていった。 一瞬、君の横顔に見えたよ。 植え込みに消えていく、その姿を目で追っていると、後ろから肩を叩かれた。 「お待たせ!」 君の白いコート。 僕はポケットの中の、温かいコーヒーを君に差し出す。 君は目を見開いて「ありがとう」と、それを受け取り、それから僕の手を取り自分のポケットに突っ込んだ。 温かい缶の感触、二本。 「私も買ってきたの」と、ペロリと舌を出して笑う。 ごめん。僕の方は当たりで出たやつなんだけどね。 君の白いコート。 ちらりと見える、中のオレンジのシャツが裏返し……なんだけど、まあいいや。

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