1
やけにピカピカな
缶
を拾う
未開封だが何も
書かれていない
カニ缶っぽい
工場で
カニを詰める前の
缶の内側のような
外側
で
清潔に清潔に磨き
あげられている
指で触れても
指紋さえ付かない
この世の物と思えない
表面加工技術が施されて
いるようにさえ感じる
最新型最高級の
スマホだって
こうはいかない
自分の顔を映しながら
缶を開けてみる
中は空っぽで
カニ缶のラベルが
ちょうど缶を裏返しにした
あの前衛作品のような
体裁で
内側から
貼られている
ばかり
紙は風雨に晒されて
頼りなく
やっと読めるか読めない
か
程度
製造年月日
が
未来の日付だった
2
缶を開けた事を
後悔し
新しい缶を探しに
街に出た
欲しかったが
缶は無かった
日が暮れた
寂しく一人
すっかり枯れてしまった
缶の蓋を閉め
はんだ付けを施した
中古の宇宙の缶詰
だけど
これは
あの不思議な前衛芸術家が
1964年に
その存在を予言していた
のと同じ
本物の
宇宙の缶詰の
本物
であること
には
間違いはない
のだ
コメント
コメントはまだありません。