日常 | 文字数: 1908 | コメント: 0

破壊的な日常

「共生」という言葉が僕を苦しめる。 「共存」という概念が僕を縛り付ける。 「自由」なんて何処にもない。 「平等」なんてのも何処にもない。 こんなに明確に縛られてるのに、君らは自由だと言いあたかも自分は幸せだと思ってやがる。 そんな偽りに満ちた笑顔が大っ嫌いだ。 きっと、僕はそんな笑顔やこの捻くれた世界を正すために産まれてきたんだろう。 そうでなければ、おかしい。そうでなければ、僕は生きていけない。 だから、今日だって僕は生きている。 鷹崎冬也(たかさきとうや)こと僕はペンを置くと、天井を見つめた。 「疲れたな。」 しばらくの間ぼうっとしていると、バタバタバタバタと音が近づいてくるのがわかる。 (やれやれ・・・)と胸中で吐露していると勢いよく、ドアが開いた。 「ねぇ、お兄ちゃん今ちょっといい?」 冬也の妹である鷹崎玲(たかさきれい)が其処には立っていた。 「れいちゃん、勝手に入ってこないでよ。」 天井を見上げながら、妹に向かって言う。 「あはは、ごめーん。何してるの?」 「宇宙を眺めてるの。」 「お兄ちゃん、頭どうかしちゃったの?」 「うるさいなあ、其れで用件は何?」 「えへ、いや何してるのかな~って。」 玲はヅカヅカと部屋の中に入ってきて、僕の座っていた座椅子の隣まできて腰を下ろした。 「ん~と、なになに~???」 先ほどまで書いていたノートを玲に覗かれそうになったので、慌てて僕は取り上げた。 「見んなよ。」 「え~、ずるい。」 「・・・玲、お前いい年なんだからさ彼氏の一人でも作ったらどうなんだ?」 僕は現在21歳のフリーター。対して、玲は19歳の引きこもり。 「お兄ちゃん、私に彼氏つくってほしいの???」 泣く素振りをみせながら、上目遣いでそんなことを言ってきやがる。 「お前此の儘近親相姦√直行で本当にいいと思ってるのか?」 僕がそういうと、先ほどまでの素振りとは打って変わって少し顎を引いた様子で「きも・・・」と言ってきた。 (やれやれ・・・) 「あ、今めんどくさいとか思ったでしょ!」 「名推理だねえ~、探偵になりたいの?」 「も~・・・ねぇ、今日何するの?」 「今日は一日オナニーするから、玲ちゃん僕の部屋から出てってくれない?」 「は?きも・・・本当にするの??」 「しないけど、出て行ってくれよ。ちょっと今冷静になりたいんだ。」 「なに、悩みごと??私聞くよ。」 「別に悩んでない。玲がベタベタしすぎるから、息子が興奮してきてるってだけ。」 「いや、きも。じゃあね。」 引き目で睨みながら、僕の部屋を後にした。 (本当に何だったんだ・・・。) あんな感じで、玲はちょくちょく僕の部屋に乱入してくる。 まあ、玲との会話がなければ僕は多分悶々と悩み続けているだろうから、良い気分転換にはなっているのかもしれないな。 それに、玲と話しているとなんか「守らなきゃ」みたいな重い重い使命感を覚えるのでまだ死んでないのも玲のお陰かもしれない。 ただ、それだけで僕の悩みがすっ飛ぶわけでも此の世界の不条理がなくなる訳でもない。 不条理こそが真理という此の漠然とした論理はなかなか手強くて、自分一人の思い込みじゃスンともしない。 「上手く生きられないのは自分のせいだ」と、いつかの君は言ったけれど上手に生きてる人がいるのだろうか。 目を瞑るというある種自然でないことを行使しなければ、其れは達成できないのではないだろうか。 僕だって目を瞑りたいさ。疲れたし死にたいし生きたくないからね。 (ふぅ・・・) また天井を眺めながらため息をついた。 すると、何故だか涙が出てきた。 (死にたい死にたい)・・・という気持ちを増幅させる魔法の涙(ポーション)だ。 涙を流していると、自然と口に出ていた。 「しにたい・・・しにたい・・・しにたいよ。」 (ふぅ・・・) 時折、天井にため息をつきながら暫く其れを繰り返していた。 すると、鼻をすする音が微かだが扉の外から聞こえていた。 (やらかしたなあ。) 「玲、其処にいるの?」 ガチャっと開くと、涙で目をはらした玲がたっていた。 「お兄ちゃん、なんで死にたいなんて言うの」 と、泣きながら僕の元へと詰め寄ってきた。 「冗談、冗談だよ。大丈夫だから。」 「隠さないでよ、泣いてるくせに。」 「・・・なあ玲、玲は生きたいと思うか?」 「・・・分かんないよ。」  こうして、また僕は破壊をつづけていた。

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