シリーズ | 文字数: 2997 | コメント: 0

プロローグ1

 薄暗い部屋の中で、僕はある動画を覗き込んだ。  それは丁度、3年前に撮ったもの。  冬斗『お姉ちゃん元気?』  僕のお姉ちゃん、麗奈に向けてのメッセージだった。  冬斗『どうしてもお姉ちゃんに、愛してるって伝えたくなって連絡してみたんだ。』  冬斗『あ、いいニュースだよ!もうすぐ家に帰れる事になったんだ!』  画面の中の僕は元気そうに笑っていた。  今見直すと、後悔が増す一方だった。  冬斗『待ち遠しいな。こんな子守みたいな仕事を終わらせて、早く素敵なお姉ちゃんに会いたい。』  冬斗『…寂しいな。』  冬斗『…もう仕事に戻らないと。大好きだよお姉ちゃん。早く会いたい。離れていても、お姉ちゃんを想ってるから。』  向こうの僕がそう言うと、一つキスをいれた。  相手が、お姉ちゃんだったから。  冬斗『それじゃあね!』  冬斗「…。」  動画が終わると、僕は息を弾ませながら、録画に入った。  冬斗「…お姉ちゃん…、…お姉ちゃんに…、…僕、嘘をついた。ごめんなさい…。」  動画では家に帰れると言っていたが、何かしらの事件により、帰れなくなってしまった状態でいた。  冬斗「このメッセージをもし、見てるなら…、」  冬斗「僕を探さないで…!」  僕は、お姉ちゃんに僕の事を…、  忘れてほしかった。 ~麗奈side~  父親(電話)『はい。』  麗奈「うん、私。麗奈だよ。」  父親(電話)『ああ、大丈夫か?昨日は急に帰っちまって…。』  麗奈「うん、私は心配ないよ。大丈夫。話があって…。冬斗がまだ生きてたの。戻ってきた。」  父親(電話)『見つかったのか?どうやって?何があった?』  麗奈「詳しい事はわからない。わからないけど…、とにかく彼から連絡があったの。何かの悪戯かもね。でも、迎えに来てくれって。」  父親(電話)『彼はどこに?』  麗奈「東京。関東地方だよ。」  父親(電話)『3年も経ってるんだろ?』  麗奈「うん、わかってるけど…、本当に彼なら?何があったのか知りたいの。」 ブオォーーン…  私はとある森林を、車で通っていた。  弟を探すため。私は冬斗に呼び出されていた。  麗奈「…ここね。」  森林の奥底に車を停めると、嫌な感じがあって仕方がなかった。  無数のハエが飛ぶ中、私は冬斗の所へ向かった。  やがて屋敷の前に着くと、冬斗のバッグが落ちていた。  中には、黒くこびりついた冬斗の生徒証明書が入っていた。  私は、冬斗はこの屋敷の中にいるんじゃないかと思いながら、屋敷の中に入っていった。  ボロボロの部屋を探し回って、冬斗の居場所を探す。  私は部屋のすぐそこにあった鍋に手を差し伸べた。  開けると、何匹のゴキブリが鍋の中から生きて出てきた。  麗奈「…!なによ、もう…!」  怒りながら腕に乗ってきたゴキブリを振り払った。  2階に行くと、机の上にビデオテープがあった。  『廃屋取材』という名前が書かれており、外見も薄汚くなっている。  私はビデオがある部屋に行き、ビデオテープを差し入れた。 カチャッ ピーーー…  不穏な音が耳をつんざく。  映像が始まると、見知らぬ3人組が映っていた。  『…こいつ大丈夫か?』  『心配するな高橋。』  『良いか?素人はいらないんだ。ヘマするなよ?アマリロの二の舞はごめんだ。ちゃんと音を拾え。』  『2年も前の話だろ?』  『アテレコはしない。』  映像の中は真夜中。  どうやら真夜中に撮られた映像らしい。  『こんな奴…、認めないぞ。』  『またかよ。』  「いつでもお前をクビにできるんだぞ。』  柄が悪い。  私はそう思っていた。  『…確認だ。屋敷内を一通り映して、導入シーンを撮る。』  『いつも通りだろ?なあ、今度はちゃんとタイトル考えてくれよ?』  『心配するな。今宵のスーワ・ゲーターズは、クソったれゴミ屋敷の情報満載!』どうだ?』  『…最高だ。』  私は無言で映像を眺めてばかりだった。  『回ってるか?よし、行くぞ。』 ガチャッ、ガチャッ…  『うぅ~ん…!』  『ちょっとどいて。』 ガチャッ、ガチャッ…  『…閉まってる。』 ガタンッ!  とか言いながら、一人が蹴ったら開いた。  何を馬鹿な事を…。  『…先どうぞ。』  『で、何でボロ家なんかに?』  『資料読めよ。』  『必要ない。ただの幽霊屋敷だろ?子供だましだ。』  『何で俺が…、生徒会長なのに…。』  『週末の代理だろ?メインじゃない。』  『あ?』  『…別に…。』  『今度のシナリオは?』  『廃墟の農家に消えた家族、怪しい事件の臭い。お決まりさ。』  『この家はいつから廃墟だって?』  『3年前だ。』  『如月、これ撮ってくれ。繋ぎの画になる。』  『…つまり、田舎モンが謎の失踪ってわけか。』  『田舎モンじゃない。水島家だ。脩司と紗由理夫妻。静かに暮らしてたようだけど…、娘の愛梨は悪い噂の多い…ギャルだったらしいな。』  『あぁ!…なんだよ…。いい靴なんて履いてくるんじゃなかったよ…。』  『これは酷えな…。病気になっちまう。』  『…けどまあ、いい背景が撮れそうだ。宮城、どう思う?』  『…宮城?』  『宮城…?…宮城!』  『如月、宮城見たか?』  『どこ行った?…たく、何考えてんだあの野郎。あいつとはもう仕事しねえぞ。』  『プロデューサーはいくらでも替えがきくんだ。カメラマンのお前と違ってな。』  『ちゃんと着いて来い。』 ガタンッ!  『何だ今の?聞いたか?』 ガチャッ…  『宮城?どこ行った?』  『宮城どこにいるんだ!』  『何だこれ…?』 ガチャンッ!  『…マジで勘弁してくれよ。よし、こうしよう。』  『宮城を見つけて屋敷を出よう。動画はもういい。』  『先に行け。俺が梯子を降りるから、その画を撮るんだ。だから…、先に行け。』  『見えるか?何だ?』 グチャアッ…!  『うわあぁーーーーーーーーッ!!!!』 ザザザ…  『ウワアァーーーーッ!!!アァ…!!』  叫び声を上げた所で、映像が終わった。  耳をつんざくような叫び声だった。  麗奈「嘘でしょ…!?」  私は足が震え、立てない状態だった。 ~プロローグ1 end~

コメント

コメントはまだありません。