眼覚め、夢のまにま
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー きっと、明日が来るなら其れはいい日だろうか。 そんなの分かるわけないか。でも分かるのは、俺が今日を最低な日にしてしまったって事くらい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー <現実> 彼女。いや、元カノの千穂が残した四ツ矢コーラをグビッと一気に飲み干す。 「ああっ!」と誰もいない狭い部屋で大きめに叫んでみたが、やはり自分しかいない。 暫く白一色の天井を眺めた。 ーー俺は何をやっても駄目なんだ。上手くいった試しがない。 "そう思っているうちは、何をやっても上手くいくはずがない"と自己啓発書か何かで読んだことがある。 けど、俺は本当に駄目だから此れからも失敗を続けるんだろうな。千穂すら訳も分かんねえまま飛び出すからな。もういっそ、俺みたいな奴は誰かと関わることもなく独りマイペースで暮らした方がいいのかね。 そんな事を考えていると、次第に睡魔が襲ってきた。 ーーいいやいいや。忘れよう。こういう嫌なことは忘れた方がいい。明日は、仕事もあるんだし生活守んないとな。 そこで俺は夢を見た。 <夢界> 其処は、病院の中庭のような場所だった。 車いすに座った、笑っている幼めの女の子がこっちへ近づいてきたんだ。その女の子は白い髪でどこか浮世離れしたようなそんな幻想的な女の子だった。 「おにいさん、初めて見る顔ね」 俺は、自然とその夢の中での記憶が培われていた。 「そうなんだ。昨日付けで此処に転院してきたからね。これからよろしく。」 「フフ」と白髪の女の子が優しい笑みを零すと、俺のすぐ目の前にまでジリジリと迫ってきた。 「い、いきなり、キスしようとかいうんじゃないよな。」 「違うわよ。貴方に光を授けたくて。」 そういうと、か細い手が俺のでこに向かって伸びてくる。 「光?」 「・・・まぁ、いいから。」 でこに触れるか触れないか寸前の所で手が止まった。 手を止めるとほぼ同時に、白髪の彼女は目を瞑りだした。 其れから、暫くというか時間にすると4時間くらい彼女と俺は止まっていた。 其の間、俺は何故かもう一つの世界の自分を見ていた。 此処で言うもう一つの世界とは、夢が覚めた時に戻る世界のことだ。 其処での、俺は何に対してもキツく当たっていて乱暴な奴だった。 此の儘じゃ、誰にも愛してもらえないだろうな、夢の中にいる俺はそう思った。 「戻りなさい。」 その一言で、ハッと我に返った。 白髪の女の子は、微笑むと「光はいつも、その眼の中に」と丁寧にそう告げた。 暫く見つめあっていると、前にも何処かで会ったような気がしてきた。 「ねぇ、君まえにも」 俺の言葉を遮るように彼女が喋る。 「じゃあね。いってらっしゃ」 彼女の言葉を遮るように夢から覚めた。 <現実> 夢から醒めると何処か脱力感のようなモノを感じた。 何か面白い夢見てた気がする、と夢の内容を思い出そうと頭をひねってみるが何一つ思い浮かばなかった。 ーーまあ、いいか。忘れよう。 どれくらい眠っていたのか確認しようと目覚まし時計を探そうとした時だった。 ふと、脳裏を白髪がよぎった。 そして、まもなく音が流れる。音が流れるであろうと知っていたような不思議な感覚だった。 ーー「光はいつも、眼の中に」ーー 胸の奥が弾けた感覚だった。何か全てが変わるという確かな意味不明を感じていた。 ~2年後~ 其れからの俺というのは、まぁ何でか他人に強く当たらなくなった。 今思い返してみても、不思議な夢だったと思うよ。 光が見えるようになってからは、いつも明るい世界であることを認識できるようになったんだからな。 ・・・おっと、そういえばこの前、また新しい彼女が出来て今度結婚予定なんだ。 赤ちゃんができるとしたら、黒髪かなあ、白髪かなあ。 --「黒髪よ。」ーー
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