袋小路
俺(鹿島 雄平)には、誰にも言えない秘密がある。
其れは俺が此の世界の神ってことさ。
何故、俺が俺を神であるか認識できたかというと、俺がいなければ此の世界は認識すらされないからだ。
俺が認識しなければ存在し得ない存在だったのに、俺が存在していることで此の世界は認識されてその中に人間たちが存在できている。
まぁ、俺が神でなくても只の人間だとしても、他の人間と呼ばれているような人達はきっと生きて等いない。
俺がいなければ、奴らは存在だってしない。
俺あっての奴らだ。何でそんなことが言えるかって、俺は奴らの人生を生きたことが無いからな。
奴らが本当に生きてるかどうか確認することが出来ないんだよ。まぁ、だからってこんな暴論がまかり通るはずもないんだけど、そうとも考えられるって話さ。
俺が神であるならば、何か特別な事ができるかどうかっていう話にもなるんだけど、俺は神だからって何か特別な事が出来るとは考えていない。
神は、唯一無二の存在であったが故に神様だったんじゃないだろうか。
ならば、疑うことの無い唯一無二の存在である此の俺が神だという話にも繋がる。
俺が神である証明も出来ないのだけれど、俺が神でない証明もされていない。
尚、俺の中の話であるが故に成り立つ話なのだけれどね・・・。
「フヒッ」
卑屈な自分の笑い声が、4畳半もない狭い部屋に響く・・・まぁロフトなんだけど(笑)。
このところ、暇すぎて思わずメモ帳に最近思案してるようなことをまとめてみた。
自分で見ても痛々しい内容なのだけれど、何処か満足感を覚えるからこうやって偶に書き殴りたくなるんだよねえ。
雄平は、ササッとマウスを移動させるとメモ帳の閉じるボタンをクリックすると、保存しないを選択してデスクトップを眺めた。
・・・お腹減ったな。
2日前くらいから何も食べてねえや。
雄平は、辺りを唸りながら見回すが、ゴミばかりで食料は見当たらない。
「チッ・・・」
仕方ねえか、何か取りに行こう。
雄平は、腰をあげようとするが倦怠感のせいか全く上がらない。
すっげえ怠いな。キッチンまで行ったらお袋にも出逢いかねないし、此の時間だとなあ・・・。
でも、腹減ったし本当に何も無いのかよ、此の部屋。
雄平は、四つん這いでアチコチ探してみるも真面に食べれそうな食料は見当たらない。
おい、マジで何処だよ。この前買った黒糖パン5つ入りだってまだ3つくらい残ってたはずだろ。
まじで、ふざけんなよ。ったく、誰だよ盗った奴。許さねえぞ。
雄平は、形相を変えながらも必死に食料を探すが、ふとその手が止まった。
いや、もういいや。別に食わなくたって平気だし。貪欲は良くないよな。
食わなくたって、平気平気。
・・・はぁ、お腹減ったなあ。何で、こんな世界に生まれたんだろうな。
まぁそれは、両親が馬鹿みたいにヤりまくったせいなんだろうけどよ。
なんで、両親は俺をこんなゴミみたいな世界に産み落としたんだろう。
ほんと、死んでくれよ。
其れなのに、如何してバイトやめた位で泣かれなくちゃいけねえんだよ。
辛いのは、俺だっつうの。
雄平は、虚空に右手の手のひらを翳しながら弱々しく伸ばした。
・・・もし、天使がいるとしたら助けてくれよ。
俺が神であるならば、天使だっているはずだろ。
俺は今、こんなに打ちひしがれてんだ。
今、助けないと本当に死んじゃうかもしれないぞ。
俺が死んだら、此の世界は終わりだ。
雄平は、伸ばした右手を力強く握りしめて地面にたたきつけた。
まぁ世界が終わるなら、俺は救われるかもな。
「フヒッ」
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