日常 | 文字数: 853 | コメント: 0

秋色ビスケット

 僕はビスケットが好きだ

 

花火の日にとうちゃんに買ってもらった秋色のビスケット

 

花火といえばかき氷のはずなのに、父ちゃんが持ってきたのはビスケットだった

 

とうちゃんいったいどこで買ってきたんだろう、って思った

 

でも、その日とうちゃんと食べた秋色したビスケットは本当に、本当においしかったんだ

 

僕ととうちゃんは川のそばの、しばふの上に座って、ビスケットをかじりながら、花火を見物したんだ

 

その日の花火はちょっと変で、真夏の雪みたいに空から火花がふってきてきれいだった

 

でも、僕は「あちあち」ってなったんだ

 

とうちゃんも「あちあち」って飛びはねていたので、とても面白かった

 

そして、とうちゃんは突然、僕におおいかぶさったんだ

 

僕はとうちゃんに、何するんだ重いよっておこったんだ!

 

そしたら、ばーんって大きな音がして、とうちゃんは吹き飛ばされたんだ

 

とうちゃんを見ると、真っ赤になっていた

 

とうちゃんは、真っ赤な炎でごうごうともえていたんだ

 

僕はそれを見て、きっと、とうちゃんは今から死体になるんだって思った

 

目がさめると、僕は病院のベットにいて、体を見るとほうたいでぐるぐる巻きにされていたんだ

 

ベットのそばにいたかあちゃんは、とうちゃんの写真を手に持って、わんわんと泣いていたんだ

 

それで、僕は、やっぱりとうちゃんはあの日に死体になったんだ、って分かったんだ

 

僕は今でもビスケットが好きさ

 

でも、花火の日にとうちゃんが買ってくれた秋色したビスケットだけは、どこにも売っていないんだ

 

僕は、とうちゃんと食べた秋色ビスケットを食べたい

 

ぜったいに探し出すんだ

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