その日、僕らは神になった。
ー(That day, we became gods in the urban areas.)
僕はその日、いつもの喫茶店で珈琲を啜りながら新しい物語の草案を練っていた。
物語を簡単に説明すると、こうなる。
ーー
読書好きの神様がいました。
そんな読書好きの神様が特別に用意した図書室には75億の本が用意されている。
飽きっぽい神様は次々に新しい本を手にとっては、読み終わらないうちに投げ捨てる。
投げ捨てるどころか、落書き帳に使ったり等の自由加減だ。
神様が気に入る本のジャンルに偏りは存在しないのだが、面白くない本は面白くないらしい。
其処で、神様は一冊の面白い本を見つけ読み進める。
その本のタイトルは「アサヒナカケイ」。
神様はその本を偉く気に入り、読み進めるのだがどうやらオチが気に入らなかったらしい。
最後、主人公は自殺を試みようとしているのだが自殺をするきっかけとなる部分から書き換えたのだ。
自らが手を加えた所を読み直しては、満足し神様は暫しの休憩を取る。
目覚めると手直したはずの、「アサヒナカケイ」が焼失していたのが分った。
焼失したのを確認して満足そうな顔をする神様は、また面白い本を探し始める。
ーー
・・・という内容の物語だ。
この物語に僕が込めたメッセージは大きく分けて2つある。
まずひとつに、誰かの人生は誰かによって操られている可能性が多々有ると言うことだ。
この物語では神様というズルいファクターを存在させることで、操る側を簡単に明示させている。
もうひとつは、もし本当に神様という存在が実在するとしたら君の行動一つ一つを監視していて時には意のままに運命を操ることが出来るかもしれないと言うことだ。もう少し、詳しく言うと自分の意思や行動すらも神様には操ることが出来るかもしれないと言うこと。
・・・なんて、薄すぎるか。
「ハハッ」
僕は思わず笑い声を漏らした。
店内にいる他のお客さんに見られている気がする・・・。
恥ずかしいからお客さんの方を見ないようにしているのだが、絶対見られてるよなあ・・・。
恥ずかしすぎる、其れになんかハハッって以上に響いたようにも聞こえるし、どんだけ大きい声で言ったんだよ僕・・・いっそ、神様に頼んで笑い声が漏れなかったことに書き換えてくれないだろうか。
・・・やれやれ。
なんでか、1つでも失敗すると急に居心地悪くなっちゃうんだよなあ。
僕は時計を確認すると良い頃合いだと分ったので、そそくさと会計をすませて店からでた。
僕は店から出ると、すぐに異変に気が付いた。
くさい・・・。
火薬の臭いか、此れ。
僕は慌てて、周りを確認すると遠くの方でものすごい煙が上がっているのが見えた。
「やっば!!」
僕は思わず口に出していたが、近くにいた女子高生も煙を見ては「やっばいよ・・・。」と言ってスマホで何やら撮影しているので、先ほどの喫茶店のように恥じる必要は無いだろう。
けど、待てよ。あんな遠くで上がっているのに何故こっちでもこんな臭いがするんだろう。
急にとてつもない不安が襲ってくる。
・・・まさか、テロか。この匂い、まさかこの付近でも起こるんじゃないのか。
僕はただ呆然と立ち尽くし、バクバクと波打つ心臓の鼓動を感じていた。
(今思えば、僕は何故この時逃げなかったのだろうと思うが、仕方なかったんだ。)
(逃げるという意識に至らなかった。只のそれだけさ。)
タラリ、冷や汗が僕の額から流れていた。この時、僕は既に放心状態だった。
先ほど、スマホを手にしていた女子高生が号哭をあげた。
「ぎぃや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
彼女の尋常じゃない声(?)を聞き、ハッと我に返った。
彼女はいったいどうしてしまったんだ。
何を見たんだろう。
そう思っていた時だった。
2023年11月19日17時47分22秒。
僕らはテロに巻き込まれて極光のまにまに姿を消した。
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