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恐怖

 激しい大雨が降り続く中、翔は全力で走った。

 翔「はぁ…!はぁ…!」

 翔(どうしてこうなったんだよ…!町中ゾンビだらけじゃないか…!)

 C-ウイルスのせいか、町の人々はゾンビと化していく。

 まさに、「地獄」だった。

 「翔!?」

 翔の後ろから、声が聞こえた。

 翔「…!?舞依!」

 幼馴染みの舞依だ。

 舞依は翔と同じく、一人で避難していた。

 舞依「無事だったのね…!一人なの!?」

 翔「うん、家族は外出中なんだ。一人で避難所に行くしかないと思って…。」

 舞依「私もよ。それより早く!」

 翔「あ、ちょっと…!」

 舞依は翔の手を引いて走り出した。

 翔は少々躓きながら、舞依に着いて行く。


 舞依「もぅ…、遠すぎるわよ…!」

 翔「舞依…!止まって…!」

 舞依「何言ってるのよ!こんな状況で立ち止まる訳にいかないでしょ!?」

 翔「そうだけど…!」

 舞依「じゃあ早く着いて来なさい!」

 休んでいる暇なんてない。

 今は緊急事態に陥っているのだ。


 そして、避難所に着いた。

 翔・舞依「はぁ…、はぁ…。」

 翔「やっと着いた…。」

 舞依「他の皆は無事かしら…。くーちゃんはもう避難所にいるけど…。」

 翔「啓太は…?」

 翔は啓太がいない事に気付く。

 思えば、久玲亜もいない。

 舞依「一緒じゃないみたい。啓太からそのうち来るって、くーちゃんが伝言をもらったらしいわ。」

 翔「そっか。無事だといいんだけど…。」

 久玲亜は啓太から伝言をもらったらしい。

 翔は大丈夫と思い、胸を撫で下ろした。


 久玲亜「あ、翔!まいまい!」

 部屋に入ると、久玲亜がいた。

 翔「久玲亜!無事で良かった…。」

 久玲亜「啓太は無事なの…?」

 翔「僕もわからない。でも、伝言はもらってるんでしょ?」

 久玲亜「そうだけど、やっぱり啓太が心配…。」

 彼氏である啓太が避難所に来ていない事に、とてつもなく心配が溢れ出している久玲亜。

 啓太は久玲亜にとって、それほど大切な人だ。

 舞依「こんな状況じゃ連絡も取れそうにないわね…。一度体勢を整えましょ。」

 舞依がそう言うと、翔はその場で座り込んだ。


 しばらくすると、町の人が避難所に集まってきた。

 翔「他の人達も逃げてきたんだ。」

 どうやら翔達以外でも、バイオハザードを見かけた人は少なくもない。

 被害が起きると、誰もが避難するに決まってる。

 舞依「ダメだわ、ちょっと通話したけど、繋がらない…。」

 久玲亜「啓太…。」

 久玲亜「早く…来て…!」

 舞依は啓太に通話するが、なかなか出てこない。

 久玲亜は泣き出しそうだ。

 舞依「くーちゃん、泣かないで。啓太はきっと来る。」

 久玲亜「本当…?」

 翔「ああいう奴だから、心配ないよ。」

 久玲亜「…。」

 久玲亜「やっぱり…怖いよ…。」

 舞依「くーちゃん…。」

 翔「…。」

 ついには、久玲亜は泣き出してしまった。

 久玲亜の啜り泣く声を聞く翔と舞依は、もうどうしようもできなかった。


 男性「おい、何か来たぞ…!」

 避難所にいた中年の男性が、ドアに向かって人差し指を指した。

バンッ!

 ゾンビ「ヴガアァ…!」

 翔・舞依・久玲亜「!?」

 部屋に入ってきたのは、一人のゾンビだった。

 女性「きゃあぁ!」

 老人「何じゃ、あやつは…!」

 翔「マジかよ、これ…!?」

 思えば、誰もゾンビを殺す武器を持っていない。

 近付いたら、あっという間に掴まれ、喰われてしまう。

 ゾンビ「ヴガアァッ!」

 久玲亜「ひぃ…!」

 久玲亜は怖くなり、立ち上がる事すらできなかった。


バンッ!

 ゾンビ「ヴガアァ…!?」

 その時、銃声が鳴り響いた。

バンッ!バンッ!

 ゾンビ「ヴガアァ…」

バタッ…

 ゾンビは頭を後ろから何発も撃たれ、血を流して倒れた。

 翔「今のは…!?」

 そこにいたのは…。


 啓太「はぁ…、はぁ…。」

 久玲亜「啓太!」

 そう、拳銃を構えていた啓太だった。

 どうやら啓太は、先程部屋に入ろうとした瞬間に、ゾンビが人々を襲おうとした所を見かけたらしい。

 啓太「まさかこんな事になっていたとはな…。拳銃を持ってて良かった。」

 久玲亜「啓太あぁッ!!」

 啓太「おわっ!?」

 久玲亜は啓太が来た所で、涙を流しながら抱きついた。

 久玲亜「啓太あぁ…!怖かったよぉ…!」

 啓太「久玲亜…。」

 啓太は泣き叫ぶ久玲亜の背中を擦った。

 舞依「あんたがいつまで経っても来ないから、くーちゃん心配していたわよ。」

 啓太「そうか…、久玲亜ごめんな、遅くなってしまって…。」

 翔「ところで啓太、その拳銃は…?」

 翔は啓太の右手に拳銃を持っていた事に目がついた。

 啓太「ああ、これか?さっき道中で拾ったんだ。」

 啓太「んでもって、翔達の分の拳銃はないかと、あちこち探した。」

 啓太がすぐに避難所に向かえなかった理由は、皆の分の拳銃を探していたためだった。

 翔「だから遅くなってしまったのか…。」

 舞依「それで、結局見つかったの?」

 啓太「二個見つけた。一個はサツの人に借りてもらった。」

 啓太「俺だけではキリがないから、やるよ。」

 見つかったのは二個だけだったが、啓太はわざわざ交番へ向かい、警察から拳銃を一個借りたらしい。

 翔「啓太…、ありがとう。」

 舞依「銃なんて本当は使いたくなかった事ないけど…、ないよりはマシね。」

 啓太「弾も沢山貰ってきた。四人に分けて渡しとく。」

 啓太は拳銃の弾を皆に渡した。


 翔「別の武器を取ったら、保留する感じだね。」

 啓太「そうだな、俺は久玲亜と行動する。翔は舞依と行動してくれ。」

 翔「了解。」

 啓太「よし、じゃあ散開だ!」

 少年達は、避難所を出た。

 少年達の更なる恐怖が今、始まる。

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