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謎の少女

~前回までのあらすじ~
 水島邸を何とか脱出できた姉弟・麗奈と冬斗。沼に沈下していた船を目にし、そこで異変が起きる。麗奈の意識は途切れ、更なる恐怖が今、始まる…。

 「お兄~ちゃ~ん…。こっちだよ…。」


~冬斗side~

 冬斗「うぅ…。」

 僕はいつの間にか、倒れていた。

 確かさっき、沼から何かが現れて…。

 冬斗「ここは…?お姉ちゃんは…?」

 そうだ。さっき、お姉ちゃんと沼に流されてしまったんだ。

 まずはお姉ちゃんを探さないと…。


 冬斗(…!お姉ちゃん…!)

 しばらく進むと、お姉ちゃんが左側を向いて倒れていた。

 冬斗「お姉ちゃん…。お姉ちゃん…?…!」

 すると、何か黒い物体がお姉ちゃんを包み込んだ。

 冬斗「お姉ちゃん…!お姉ちゃん!!」

 物体はお姉ちゃんを連れて行ってしまった。

 追いかけないと…。

 ひょっとしたら、この船の中にいるかもしれない。

 扉はボロボロだった。


 作業員A『死んでる…!皆死んでるんだ…!』

 作業員B『どうした?』

 作業員A『エンジンルームだ!』

 作業員B『お前、何の話してんだよ?』

 作業員A『皆あの子に殺された…!』

 作業員B『おい、何だよ?一体何が起きてるんだ?』

 作業員A『何か武器がいる…!この船に武器はあるか!?』

 作業員B『俺もわからねえ…。とにかく離れよう。ここから出るんだ。』

 突然、二人の作業員らしき人物の幻覚が見えた。

 しばらくすると幻覚は消え、地下へ続く床の扉が開いていた。


 作業員C『ほら、いい子だから落ち着いて…。』

 作業員C『ヴッ!?ヴア″ァ″ァ″ァ″ア″ッ!!』

 また幻覚が見えた。

 何かに襲われてる…!?


 少女「思い出してきた?」

 冬斗「え…?君は誰…?」

 僕の前に突然、黒髪の少女が現れた。

 僕は問いかけようとした途端、少女は笑いながら去っていった。


 少女を追いかけようと、僕は必死だった。

 思い出してきた?僕はこの子と何か繋がりがあるの?

 少女「…家族になれるって言ったのに…。」

 冬斗「一体何を言ってるの?」

 少女「…そう、言ったのに!」

 冬斗「…!待って!」

 少女は逃げ出してしまった。

 家族になれる?何故?

 僕は本当に何もわからなかった。


 僕は少女の後を追うと、少女の所へ辿り着いた。

 少女「これ見て。」

 少女はビデオテープらしきものを僕に差し出した。

 冬斗「え?どうして…?」

 少女「思い出さなきゃダメ。そうすれば家族になれる。」

 この子は僕の何を知っているの?

 家族になれるって、どういう事?

 僕は仕方なく、そのビデオを見る事にした。


ピーー…


 冬斗『美雪先輩…、どんどん酷くなってる…。』

 美雪『きっと奴に攻撃された時…、感染したの…。恐らく、もう手遅れよ…。』

 美雪『でも自業自得ね…。私のミスで逃したわ…。』

 冬斗『そんな…、気にしないでくださいよ…。僕は見殺しにはしません。』

 美雪『…あなたは無事なの…?』

 冬斗『そうプログラムされてるんです。こんな事になるなんて…。』


 美雪『これを持って行って…。あの子の組織サンプルが入ってるから…。』

 美雪『あの子を見つけて…、終わらせるのよ…。』


 冬斗『エヴリン、どこにいるんだ…?』


 美雪(通信)『そっちはどう…?』

 冬斗『吐瀉してます。体の質量以上に吐いてます。』

 美雪(通信)『それはまずいわね…。このままじゃ奴の不細工な友達が増えてしまう…。』

 美雪(通信)『いい?取り返しがつかなくなる前に、早くエヴリンを探して…。』

 冬斗『わかりました。』


 冬斗『どうやってここまで…?』

 美雪『…エヴリンは…?ゲホッ…!ゲホッ…!』

 冬斗『あの子は暴走してます。今すぐ処置しないと、取り返しがつかなくなります…!』

 美雪『…どの道、私はもうすぐ死ぬわ…。』

 冬斗『そんな事言わないでくださいよ…!』

 美雪『奴はあなたを信用してるわ…。あのクソガキ、私の事は全然…。…!』

 美雪『待って、エヴリン違うの。エヴリン!そんな風に呼ぶつもりは…!分かりなさい、エヴリン…!』

 冬斗『あの子はあなたを支配しようとしてるんです!気をしっかり持って!先輩!!』

 美雪『あ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″あ″っ!!』

 美雪『グヴェ…!ゲホッ…!ゲホッ…!』

 冬斗『エヴリンやめろ!今すぐやめるんだ!!』

 美雪『私に触らないで!』

 冬斗『うわ…!わあぁぁぁぁぁぁあっ!!』


 冬斗『うぅ…!…!』

 冬斗『くそっ…!くそっ!』


 冬斗『はぁ…、はぁ…。』

カタカタ…

 冬斗『…お姉ちゃん…、…お姉ちゃんに…、…僕、嘘をついた。ごめんなさい…。』

 冬斗『このメッセージをもし、見てるなら…、』


 冬斗『僕を探さないで…!僕の事は全部忘れて…!』


 冬斗『じゃあ…、元気で…!』


 エヴリン『これからはずっと一緒だよ。』



 冬斗『うぐ…!うわあぁぁぁぁぁあっ!!』

ゴポゴポ…


 映像はここで終わった。

 そうか。僕は…。

 この船であの子を…、エヴリンを必死に追いかけていたんだ。

 ショックのあまりに、何もかも記憶が失った訳だ。

 お姉ちゃんに言い残したあの言葉も、あの時に言い伝えたんだ。

 全部…、思い出したよ…。


 エヴリン「思い出した?」

 冬斗「うん、エヴリン。全部思い出したよ。」

 エヴリン「じゃあまた家族になってくれるよね?」

 冬斗「いや、ダメだ。家族にはなれない。これまでも、これからも…。」

 冬斗「君の家族になんかならないよ!」

 エヴリン「…!じゃあいい。お前なんかいらない…。」

 エヴリン「アハハハハハッ!!」

 エヴリンは僕の方まで近付き嘲笑うと、すぐに去ってしまった。

 エヴリン、君は…。

 誰の家族になんか、なる訳にはいかない。

 君は悪い子だ。

 そんな事をする子は…、

 殺してまででも止めてやる。

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