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Chapter3 暗夜④

 「あ~、食った食った~。」
 夜更けを迎えた。
 ちょっと遅くなっちゃった。人もだんだん少なくなっていく。
 「そういえば涼介はどうする?このまま私の巣に寝泊まりする?」
 「んー、それは流石にまずいから遠慮しとくわ。俺ぁどっかで休める場所探しとくよ。」
 「ふふっ、そっか。」
 「んじゃ、また明日な。」
 そう言うと、涼介は向こうへ歩いていった。

 「さて、明日に備えて休もう。」
 「そうだね。」


 …まだまだ距離は遠い。

 何だか、嫌な予感がする。



 何者かに見られてる?


 そんな気配がする。


 昼間と同じ気配。


 でも、若葉は気付いてない。



 「ねえ若葉…。」
 「ん?どうしたの?お姉ちゃん。」
 「なんか…、視線感じない?」
 「え?また?」
 もしかして、私にしか見えない謎の視線が迫ってるの?
 「うん。気のせい…じゃないと思う…。」
 「ひょっとしてお姉ちゃん、疲れてる?
 なんか、言っている事が変だよ?」
 「そうなのかな…。」
 若葉からそう言われるけど、何だか落ち着かない。
 とりあえず、警戒した方が良さそう…。



《若葉視点》
 さっきから、お姉ちゃんの様子が変だ。
 「視線を感じる」…。どこからなんだろう?
 私はそんなのは全く感じていない。
 私はとりあえず、「疲れてる」とはぐらかしてるけど…。
 本当に誰かに見られてるのかな…。
 そう思うだけで、背筋がゾクッとしてきた。



《奈那美視点》
 嫌な予感が続いていく。
 それうえ、街の様子も変だ。
 まだ日付が変わってないのに、人がいない。
 どういう事だろうか?
 ここは東京。それに歌舞伎町。
 普通なら、夜でも賑やかになっているはず。
 でも今は違う。
 まるで寂れたように、人が全然いない。



 するとその時ーーー。



 「グワァッ…。」
 「…!」
 「…お姉ちゃん?」
 「今…、声が聞こえた…。」
 「声…?」
 本当に若葉は気付いてないのだろうか…?
 若葉はキョロキョロと辺りを見回す。
 「ちょっとお姉ちゃん、怖い事言わないでよ…。」
 「本当にわからないの?若葉…。」
 「わかんないよ!早く巣に帰ろう!」
 急ぎめで若葉は歩き出した。
 どうなんだろう…?やっぱり若葉は気付いてるのかな…。


 「グワァッ…!」
 「…!」
 また、声が聞こえた。
 私達の見えないどこかで聞こえてくる。
 そう思った直後…。



ガシャアァッ!!
 「危な!?」
 突然、近くに積んである木箱がぶっ壊れた。
 奥に何かいる…!


 「グワァッ…!」
 「…!何あれ…!?」
 ようやく正体を現した。
 その姿は、まるで怪物のような人間だ。
 表現しにくいけど…。
 「わからないけど…、普通の人間ではない事は確かだね。行くよ!」
 私はそう言うと、鬼薙刀を構える。
 相手の武器は…、ハンマーか?
 当たったら骨折じゃ済まない。


 やってやる…!



 「アァッ…グワァッ…!」
 ようやく倒れた。
 狂ったような動きをしていて、攻撃を避けるのに少し手こずった。
 「何だったんだろ…、あれ…。」
 まあ確かにあの感じからして、普通の人間とは思えない。
 何と言っても、見た目はかなりグロテスクだ。
 「多分これは…、


 …大屋からの洗礼かもね。」
 「…え?」
 「今回のこの件、全部大屋と関わっているに違いない。
 お姉ちゃんはそう思ってる。」
 「……。」
 …月が薄黒い雲に隠れる。
 何とも不気味だ。

 「大屋は、お姉ちゃん達の見えないどこかで、こう言ってる。
 ここから始まるのは、今みたいな暗い夜…。


 「暗夜」が始まるんだって。」
 「…暗夜…。」
 辺りは闇に包まれているように暗い。
 ここから毎日、このような夜が来ると思う。


 大屋に勝つまで…、暗夜は終わらないーーー。

~Chapter3 暗夜 END~

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