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久玲亜の過去

 あたしは橋本 久玲亜(はしもと くれあ)。

 あたしには一人の彼氏がいる。

 茅野 啓太(かやの けいた)だ。

 彼は熱い心の持ち主で、そんな彼があたしは好きになった。

 中学校の頃、元から臆病者だったあたしは席を立ち上がる事すらできなかった。

 その時に…。

 「お前、大丈夫か?具合でも悪いのか?」

 彼の声がしたんだ。

 この時の啓太は、すごくイケメンだった。


 「久玲亜、部活どうする?」

 久玲亜「え、あたし?」

 中学校に入ってから初めての部活。

 小学校からの友達と、何部に入るかを話していた。

 「あたしバド部入ろうと思ってんだけどさ、久玲亜も入らない?」

 久玲亜「えぇ、あたしはいいよ…。」

 そもそも、あたしは運動はできなかった。

 小学校の持久走では、最下位に近いくらい。

 「じゃあ、久玲亜は何部に入るの?」

 久玲亜「う~ん…。」

 「趣味に合ったやつでいいんじゃないか?」

 突然声がした。

 聞き覚えのある声。

 「ん?啓太?」

 啓太「俺はバスケが好きだから、バスケ部入ろうとしてたからさ!」

 「そこ威張るとこ?」

 啓太「お前らはどうするんだ?」

 「あたしはバド部だけど?」

 啓太「お前は?」

 久玲亜「え、あ、えっと…。」

 男子とあまり話した事がなかったから、あたしはすごく緊張していた。

 啓太「趣味とかさ、それに合ったやつない?」

 久玲亜「えっと…、イラスト…かな…。」

 啓太「お、じゃあ美術部でいんじゃね?」

 久玲亜「え…?」

 「啓太、ここは久玲亜に決めさせないと!久玲亜が困ってるでしょ?」

 久玲亜「あ、あたしは大丈夫だよ…。当たり前の事言っただけだし…。」

 啓太「じゃあ、これで決まりだな!」

 啓太「頑張れよ!美術部!」

 久玲亜「あ…。うん…!」

 あたしは啓太の言葉でドキッとした。

 鼓動が止まらなかった。

 啓太は優しくてかっこよくて…、あたしはそこから啓太の事が気になって仕方がなかった。

 「久玲亜、どうしたの?」

 久玲亜「ふわっ!?あ、いや、何でもないよ!」

 「そう?体調悪いならすぐ言いなよ?」

 久玲亜「うん…、ごめんね、心配かけて…。」

 啓太の事が好きなんて言えない。

 心の中に隠したままでいた。


 一年が経ち、あたしは放課後に体育館へ向かった。

 バスケ部を見に行ってた。

 体育館の中から、ドリブルを着く音が鳴り響く。

 久玲亜「あ…。」

 あたしは啓太を見つけた。

 この時は、啓太はベンチメンバーに入っていた。

 大会が近い中、あたしは啓太を見守っていた。


 久玲亜「…。」

 あたしは昇降口の隅に座り込んでいた。

 胸の中のモヤモヤがあったままだった。


 「何してんの?」

 久玲亜「ん…?あ…!」

 あたしを呼んだのは、啓太だった。

 首にはタオルがかけられてる。

 昇降口の隅に座り込んでいた事に、あたしは啓太から目を逸らした。

 啓太「帰るか?一緒に。」

 久玲亜「…え?」

 啓太はあたしと下校する事を言い張った。

 これはもしやと思い込みながら、あたしは下校を始めた。


 久玲亜「ねぇ、啓太…君…。」

 啓太「ん?」

 久玲亜「あのさ…。」

 あたしはその時、頭の中がぐちゃぐちゃになり、何を言おうとしていたのかもわからなかった。

 久玲亜「…やっぱり何でもない…。」

 啓太「…そうか。」

 この時、あたしは啓太は呆れたんじゃないかと考えてばかりだった。

 ただでさえあたしは、男子と話す機会なんてなかったのに…。


 啓太「久玲亜…だっけ?」

 久玲亜「え?あ、うん。」

 突然、啓太はあたしの名前を言った。

 あたしはドキッとした。

 啓太「俺さ、実は…。」


 啓太「…一年の時から、久玲亜が好きだったんだ。」

 久玲亜「…!?」

 突然の告白だった。

 確かに中一の時、あたしは散々啓太に世話を焼かされていた。

 啓太はこんなあたしでも、気を遣ってくれた。

 悪いのはあたしの方なのに…。

 久玲亜「啓太君…?」

 啓太「俺、去年から久玲亜の事、気になっていたんだ。」

 啓太「だから、今から言う…。」

 啓太「久玲亜、俺と付き合ってくれ!」

 久玲亜「…!!」

 啓太からの告白。

 断る事なんてできなかった。

 最初に好きになったのは、あたしの方だったから…。

 久玲亜「…あたしも…。」

 啓太「…!」

 久玲亜「あたしも…、啓太君の事が…好き…でした…。」

 久玲亜「あたしからも…、お願いします…!」

 啓太「久玲亜…。」

 中二で、あたしは啓太と付き合う事になった。


 啓太「久玲亜!」

 久玲亜「ん?どうしたの?」

 啓太「久玲亜に会いたくてさ。時間いいか?」

 久玲亜「うん。構わないよ。」

 あたしは啓太と付き合ってから、毎日話す事ができた。

 告白されるなんて思ってもいなかったけど、啓太と一緒にいる時は、今でも楽しい。

 そう思っていた。

 それから中三になっても、卒業しても…、あたしと啓太は毎日のように会って、沢山話をした。

 あたしは、幸せで泣きそうになった。

 やがて、あたしは恥ずかしがりから立ち直り、いつもとは違う日々が続いた。

 これも、啓太のおかげだ。


 高校に入学し、沢山の友達もできた。

 最初に友達になったのは、翔(しょう)とまいまい(舞依(まい))だった。

 こんな幸せな毎日は、あたしは忘れる事はできなかった。


 啓太「久玲亜。」

 久玲亜「…。」

 啓太「久玲亜!」

 久玲亜「あ、何?啓太。」

 啓太「さっきからボーッとしてたからさ、何かあったか?」

 久玲亜「ううん、何でもないよ。」


 久玲亜「ねぇ、啓太…。」

 啓太「ん?」

 あたしは啓太に、こう言った。


 久玲亜「…これからずっと、あたしを特別な人にしてね♪」

 啓太「ああ。するよ。」

 久玲亜「えへへ、啓太大好き!」

 啓太「おい…!この野郎~!」

 これからはずっと啓太と一緒。

 そんな毎日が続いた。

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