旧同タイトル | イベント: 同タイトル | 2017年9月 | 文字数: 1040 | コメント: 0

みっつの涙

🗡️ 一番槍

 あるところにお父さんと二人きりで暮らす子供が居ました。子供には友達が居ませんでした。お父さんは子供のためにロボットを作ってあげました。 「やぁ、君の名前は?」 「わぁ、ロボットが喋ったよ。お父さん」 「いいから、答えてあげて」 「ぼくは、ロイ。君、歳はいくつなの?」 「ふたつ」 「ふーん。できたばかりじゃないんだ」 「AIだけは2年前にできてたんだ」 「じゃあ、君の名前は?」 「ふたつ」 「お父さん! ダメじゃん!」 「あれ? おかしいな?」 「まぁ、いいや。じゃあ、今日から、僕は君を『ふたつ』って呼ぶよ」 「『ふたつ名』って奴ですね」 「お父さん、AIの教育方針について話し合おうか?」  長いことロイとふたつは仲良くしていましたが、ロイが成長すると時々ふさぎ込むようになりました。  お父さんは、折を見てロイに話を聞いてみました。ロイは周りをよく確認してから、お父さんに打ち明けました。 「お父さん、僕、やっぱり、人間の友達が欲しい」  お父さんは、とうとうこの日が来たかと思いました。 「分かった。で、そのこととは関係ないんだが、実は、ふたつと君は別れなければならない。ふたつは長い間、人間と暮らしたAIとして、最先端の研究所で研究に協力することになったんだ。つらいだろうが我慢してくれ」  しばらくして、一人の若者がお父さんの助手としてロイの家にやって来ました。ロイと同じくらいの年です。 「僕はロイ。君の名前は?」 「『みっつ』って呼んでくれ。よろしく、ロイ」 「よろしく、みっつ」  ロイとみっつはあっという間に仲良くなっていきました。  あるとき、なにかの話の流れで、こんな会話に流れになりました。 「みっつ、君は僕の初めての人間の友達なんだ。その前の唯一の友達はふたつっていうロボットだったんだ。かけがえのない存在だったけど、やっぱり心のどこかで『人間じゃないんだなぁ』って感じがしてた。今はどこかの研究所で頑張ってるらしいんだ」  そのとき、みっつの両の眼から涙が溢れ出ました。 「ど、どうしたの? みっつ!」 「分からない。何も分からないんだ」  みっつはかぶりをふるばかりでした。  お父さんは驚いていましたが、何に驚いているのか分かりませんでした。  消したはずの記憶があったこと? それについて感情を抱いたこと? そもそも感情を抱いたとして、どんな感情を抱いたんだ?

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