日常
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文字数: 590
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死神グース
とっぴょうしもない話からはじめて恐縮だが、僕の友人グースは死神である。はじめ、そんなことを知らずに僕とグースとは友人となったが、ある日、悩ましき顔をした彼は、どうやらふさぎ込んだ様子で「ぼく、実は死神なんだ」と申し訳なさそうにいった。僕は、「へー、すごいね」と答えた。そのような事態を経て、僕たちの友達性は神格化した。ほんのささやかなエピソードだけど。
グースはまさしく死神であり、人の命を奪う。ちょっとした喧嘩をしたある日僕も命を奪われそうになったことがある。その手筈はさすがに巧妙であり、命を失いそうになりながら感心したものだった。
ある日のこと、「ごめんね」とグースが言った。僕はどうしたんだい、と答えた。するとグースは、「(その大きな瞳を閉じて、ぽたぽたと涙を流しながら)君の猫を殺さなければならないんだ」と言った。たしかに僕の家には太った黒猫がいて、なんの由来か知らないがジジと呼ばれていた。僕の猫を殺害する理由を尋ねると、「うえからの指示なんだ」と答えた。その答えに僕は憤慨した。グースにではなく、その「うえ」とかいうものに。僕の怒りのようすをみて、グースはあわてた。グースは僕との友情の消失を懸念したらしく、「ごめんよ、ともだちなのにごめんよ」と言う。その悲哀をみて、僕の憤怒はすとさめる。そして、あたまがくるくるとまわり、恐ろしい計画を思いつく。
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