日常 | 文字数: 1989 | コメント: 0

子ネズミの質問ごと

 これはとっても大きい家の大きな大きな床下の空洞を巣穴にしているネズミのお話です。 

 ある日子ネズミはお母さんに聞きました。 

「ねぇ、お母さん。どうしてぼくはこの巣穴から外へ出てはいけないの?」

 お母さんネズミは答えます。

「それはね、ネズミの先生がそう言っているからよ」

 そう言われてしまったので、子ネズミは巣穴の入り口横にいる木くずで作られた。
 まぁるい家にいる眼鏡をかけた先生ネズミを訪ねました。

「先生、先生。教えて欲しいことがあるんだ」

 家から眼鏡をかけた、先生ネズミが手入れの行き届いていない毛並みを着込んで出てきました。

「なんだい、子ネズミ君。いつになく勉強熱心じゃないか、何が聴きたいんだい?」

「先生、ぼくはなんで外に出れないか知りたいの、だってあの床板の間からでてくる日の明かりはとっても気持ちがいいのだもの、もっと浴びたいよ」

 子ネズミの訴えを聴いて、先生ネズミは得意げに答えます。

「なんだそんなことか、それはね、長老ネズミがそう言っているからだよ」

 それを聴いた子ネズミは今度は巣穴の奥の方の長老ネズミを訪ねます。

 てこてこと小さな手足を細かに動かして子供ネズミは長老ネズミの家へ着きました。

「おじいちゃーん。おじいちゃーん」

 大きな声で叫びます。長老ネズミは最近耳が遠くなってしまって、大きな声でないと聞こえないのです。

「なんじゃね、子ネズミ。ワシのことは長老と呼びなさい」

 のそのそとしゃがれた声の長老ネズミが家から出てきました。

「ねぇおじいちゃん、ぼくね、どうして巣穴からでてはいけないのか知りたいの」

 長老ネズミは笑って答えました。

「ふぉっふぉっふぉ、そんなことか、それは簡単。ワシの前の長老も前の前の長老もそう言っていたからじゃよ」

 まーたです。しかも今回は聞く相手が天国にいるので、子ネズミはほとほと困ってしまいました。

 その様子を見た、長老が子ネズミに助言を与えました。

「古いことが知りたいなら、家の柱に聞いてみると言い、この巣穴のさらに奥にあるずっとずっと昔からある柱じゃ、柱ならきっとなぜ外にでてはいけないか知っておるよ」

 家の柱は長老ネズミよりもずっとずっと長生きしています。これで最後だろうと、一番奥の薄暗い場所に立派にそびえたつ柱に話しかけました。

「ねぇ家の柱さん、聴きたいことがあるんだ」

 柱は低い声で、答えました。

「なんだい、小さなネズミ君」

「どうして、ぼくらは巣穴の外へ出てはいけないのか知りたいの!!」

 家の柱はしばらく考え込んでこう答えました。

「外へ行っては行けないことなんてないよ、お外は素晴らしいんだ。私は外の世界を見ることができるが外には砂糖もお米も日の光もたっくさんあるよ」

 やっぱりそうかと子ネズミは思いました。うすうすそうではないかと思っていたのです。

「ありがとう家の柱さん、やっと知りたいことがわかったよ。じゃあぼくこっそりお外へ行くね」

 子ネズミは意気揚々と長老ネズミの家の前を通り、自分の家にいるお母さんネズミにつからないように、先生ネズミが寝ているのを確認して。

 巣穴の外へでて猫に食べられました。

 猫は首を傾げます。

「おや、どうして今日に限ってネズミが出てきたんだろう。もうずっと出てこなかったのに」

 慌てたのは巣穴のネズミたちです。子ネズミがいないことを知った、お母さんネズミは先生ネズミと長老ネズミから話を聴いて家の柱へと訪れました。

 お母さんネズミが柱へ何を言ったのか問いかけます。

「やぁネズミさんたち、そろってどうしたんだい?」

「柱さんウチの坊やがどこへ行ったか知らないかしら?」

「あぁ、それなら。巣穴の外で砂糖を食べているんじゃないかな。もしかするとお日様の下で寝転んでいるかもしれない」

 なんだと、そんなに素晴らしい世界が外にはあるのかと、ネズミたちは驚き、子ネズミに砂糖を全部食べられる前に外へ行かねばと、周りのネズミも誘って外へ行きました。

 驚いたのは家の人間です。家の下からネズミがわんさか出てきたのですから、家の人間はすぐに毒の霧を巻いてネズミを皆殺しにしました。

 人間は首を傾げます。

「どうして急にネズミが湧いたのだろう?」

 だぁれもいなくなったネズミの巣穴だった場所の奥にある柱がボソリとこういいました。

「これで齧られる心配が減ったな、よかったよかった」

 これでお話は終わりです。チャンチャン

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