日常 | 文字数: 308 | コメント: 0

食べる、食べる

 かつて

 家の側を流れる川で捕った魚を、焚火の周りに並べて焼く。植物で葺いた屋根の下、家族みんなで火を囲みながら、明日の狩りの話や、昔話に花を咲かせている。


 いま

 電子レンジで温めたコンビニ弁当を、テーブルにおいて蓋を取る。ディスプレイの上を流れていくたくさんのつぶやきを眺めながら、スマホで友達にメールを送る。


 いつか

 助手席のカバンから固形食糧を取り出して、賞味期限も見ずに封を切る。ながら運転をとがめる人はもういない。旧式の車が無人の都市を進んでいく。


 どれだけ時代が変わっても、人は食べることをやめられない。いつか滅んでしまうまで、きっと、きっと。

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