ジョーク | 文字数: 1575 | コメント: 0

Q-Shock

 ステージにイスが5つ密着して横に並べられている。  右端のイスにコートを着て帽子を目深にかぶった男が座っている。  設定としては、電車の中。やがてアナウンスが入る。 「秋葉原~、秋葉原~」  AとBの2人がイスの向かって左から乗り込んできて、Bが左端、AがBの右隣のイスに座る。 A「いやー、とうとう買っちゃったよ、Q-Shock」 B「さすが、アキバ、安かったよなー」 A「税込みでニッキュッパ」 B「298円とはなー」 A「……なんか、今頃、不安になってきた」 B「……なんか日本語たどたどしかったよな?」 A「見てみよう」 B「お、おう!」 A「ストップウォッチ機能とか試してみるか?」 B「あ、じゃあさ、ただ試しても面白くないから、俺が目をつぶって10秒経ったと思ったら、『ストップ』っ   て言うのやろう」 A「あ、ああ、そうしよう」 B「あ、足でリズム取るのアリな?」 A「OK。いくぞ! はい、スタート!」  Bは黙って足でリズムを取り始めるが、8つ足で「トンッ」とやったところで、ピタリと動きを止める。 A「おい、何、勝手にやめてんだよ!」  AはBの肩を揺すった。 A「あれっ? びくともしねぇ? それだけじゃなくて、めちゃくちゃ堅てえ!」  ここで、急に帽子男がしゃべり出す。 帽「9秒が急病なんです」  Aは帽子男の存在をほとんど忘れていたので、かなり驚いた。 A「な、なんなんですか? あんた」 帽「9秒が急病なんです」 A「だから、だじゃれ言ってる場合じゃないんですよ! 友達が動かなくなった上に堅くなっちゃって!」 帽「あなたの時計を見てご覧なさい」 A「はぁ? あれ? 8秒で止まってる。やっぱり偽物つかまされたのか?」 帽「違います。9秒が急病で入院してしまって居ないので、9秒になれないのです」 A「はぁ? さっきのだじゃれじゃないの?」 帽「本当です。私は時間管理局からあなたをスカウトに来ました。どうでしょう? 9秒が退院するまでの間、   代理の9秒をやっていただけませんでしょうか?」 A「えぇっ! 私が? 急な話ですね。私なんかに出来るんですか?」 帽「大丈夫! 我々がしっかりサポートします。それに時給は弾みますよ?」 A「え? 弾むって、どれくらい?」 帽「これくらいです」  帽子男はおもむろにポケットからスーパーボールを取り出すと床に思い切り叩きつけた。  2人はボールの行方を目で追った。 A「お断りさせていただきます」 帽「冗談です、冗談。時給1千万円でいかがでしょう?」 A「はぁ? 時給1千万円? それこそ冗談でしょう?」 帽「これが契約書です。これにサインすれば、時給1千万円はあなたのものです!」  帽子男は懐から3つに折りたたんだ契約書を取り出した。  Aはそれを奪うようにして手にすると、隅から隅まで読んだ。 A「ほ、本当だ!」 帽「それではサインを」  Aは早速サインをしようとするが、直前で思いとどまる。 A「俺、9秒になるんですよね? そしたら、ずーーーーーっと9秒で永遠に1時間経たないんじゃないかな?」  帽子男は後ろを向いて、 帽「チッ、もう少しで、代わりが見つかると思ったのに」 A「おい! お前、誰なんだよ?」 帽「俺か! 俺は10秒だよ! 代わりの9秒が見つからないと、9秒に格下げになっちまうんだよ!」 A「だったら、お前が9秒やれや!」 帽「いやぁ、俺、重病人なんです」 A「こんな元気な重病人が居るかぁ?」  A、帽子が飛ぶほど、帽子男の頭を張り倒す。

コメント

コメントはまだありません。