旧祭り | 文字数: 520 | コメント: 0

みっつの涙

 由美は大介と展覧会に行った。
恋人と絵を観に行くのははじめて。
その画家はフランスの画家で、風景画で有名な人だ。
ノートルダム寺院の絵の前で由美は立ち止まる。
寺院のステンドグラスがきれいだ。由美はひきつけられた。
観ているとなぜか涙がこぼれた。
絵を見て泣けてきたのははじめてだ。
感動したのだろうか。
それとも大介に手を引かれて観ることがうれしいからか。
由美にはわからなかった。
      ◆
 由美の結婚が決まったので由美は父母と一緒に
クワガタが出そうな温泉宿に行った。
母と一緒にお風呂に入り、母が由美の背中を流してくれた。
母は由美の背中を優しく洗いながら、
「この背中は私のものだよ」
と言った。
由美は心の中で「この背中はもうあなたのものじゃない」と思っていたので驚いた。
老いはじめた母は泣いていたのかもしれない。
      ◆
 大介は独身最後の夜、一人で飲んでいた。
月がきれいな晩だった。
ああ俺も結婚したらもう今までみたいに自由気ままはできないな。
好きな世界にどっぷりとはつかれない。
なんかうれしいけれどもちょっと泣ける。
お月さんがにじんで見えるよ。

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