日常 | 文字数: 331 | コメント: 0

白紙の砂浜

 白い砂浜の端に膝を抱えて、打ち寄せる文字を眺めている。
 黒い水。手を差し入れると、手のひらにいくつかの文字が残る。

 愛
 勇気

 どうにも使いづらい。手のひらに文字を載せて波を待つ。波が愛と勇気をさらって、代わりに別の字が残る。

 フォーマルハウト
 事象の地平線

 意味が分からない。ため息をついた。
 小説を書くことができれば、退屈な毎日がちょっとは面白くなるのかもしれないと思って、この砂浜にやってきた。
 だけど打ち寄せる文字は、どれもこれもよくわからないものばかり。
 どうして世界はこんなに平坦なのだろう、そうぼやいたとき、一つの文が打ち上げられる。

 これがお前の心の中だ。

 打ちのめされた。

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