旧同タイトル
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文字数: 659
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うまくいかない
彼の魅力はあの眼かな、と美弥子は思う。
美弥子が話しかけると真剣な目をして美弥子を見てくる。
物静かだ。質問には素直に答えているという感じで好感がもてる・・・
娘のミドリが付き合っている人にあってほしいと言ってきたのはつい最近。
大宮でまず食事をしようと言ってきた。
彼の職業がお坊さんだと言ったのは前の晩である。
「え、この前聞いたとき、一人で会社やっている人とか言ってたじゃない」
娘は幼少時からなんか問題になりそうなときは、うそをつく。
坊さんと結婚した人をふたり知っているが一人は離婚した。
ミドリもうまくいくのはフィフティフィフティかなと美弥子は思ってしまう。
★
「お掃除はできるんでしょうね」
この間ミドリが彼の家に行ったとき(住まいは庫裏というらしい)、
お料理を母親から教わったことがないとミドリが言った時、相手の母親から言われたらしい。
「お寺って朝はおそうじからはじまるのですか?」
私は彼に聞いてみた。
「お掃除するところでやっかいなのは葉っぱの落ちる季節くらいですよ」
葉っぱ・・・ミドリは大学時代、葉っぱの絵ばかり描いていた。
「ふたりは葉っぱつながりなのかもですね」と
美弥子は言ってみた。
カフェの食事は急に入らなくなった。
美味しそうに見えたのに。
かすかにお香のにおいがするこの青年との
結婚がうまくいかなかったら、
きっと私のせいかもと美弥子は思えてきた。
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