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『ようこそ』が止まらない

 かつて世界最速を誇ったジェットコースターのレールは、吹き飛んだ観覧車の下敷きになっていた。

 ぺしゃんこにつぶれたお化け屋敷から流れ出た赤い液体が、だんだんと乾いて、アスファルトの

染みになりつつある。

 屋根をなくした受付用ブースの中で、ジーナは椅子に座ったまま、お客様がやってくるはずの

ゲートを眺めていた。彼女の電子頭脳の中では、プログラムがカウントを続けている。

 16時10分、入園者0。

 16時20分、入園者0。

 ゲートの向こうの、ロールケーキのような形の駅舎には、黒く醜い焦げ跡がついていて

その中からは殺虫剤にやられた芋虫よろしく、列車がにゅっと突き出ている。

 16時30分、入園者0。

 16時40分、入園者0。

 彼女はただ、お客様を待っている。

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