旧同タイトル | イベント: 同タイトル | 2018年3月 | 文字数: 943 | コメント: 0

もうすぐ始まる

 もうすぐ始まる 1  ネットの片隅で、ひそひそと声がする。 「三月下旬になっちゃったけど」 「やばくね? さすがにやばくね?」  すると別の声が、高らかに告げた。 「大丈夫、だっ」 「だ、だれだ!」 「名乗るほどの者でもないがっ、同タイトルは」  もうすぐ始まる 2  部屋にこもってパソコンをいじっていた兄が  突然、弾丸のように部屋から飛び出していったかと思うと、  大量のねじや銅線、電子部品を買って帰ってきた。  見かねた父が熊のように吠える。 「おい、いい加減にしろ、お前大学は」 「待って! 今日だけ待って!」  普段はナマケモノみたいに重鈍な兄が息せき切って父に叫ぶ。 「できそうなんだ、タイムマシン!」  すると扉が開いて、もう一人の、だけど少し大人になった私が現れて 「ごめん、それを壊しに来た」  もうすぐ始まる 3 「もう誰も来ませんよ」  閑散とした広場で、コート姿の男がつぶやくように言う。  かつて大勢の人でにぎわったその広場には、今では落ち葉が降り積もる。  壁際には女が一人。  チョークで絵を描いて、描いて、描いて、描いて。  男は言う。 「あなたがここでどんな絵を描いたって、もう誰も来ない。  素人が絵を書いて見せっこする時代は終わったんです。  今じゃみんな神絵師の絵に夢中で  こんな小さな広場のことなんか忘れちまってる」  女はチョークで絵を描いて、描いて、描いて。  男が何度も呼び掛けて、ようやく女は振り返った。  彼女は手の甲で頬をぬぐい、挑むような眼でにらんだ。 「黙って見てなよ。あんたをさ、神の目撃者にしてやるから」   もうすぐ始まる 4  ネットの片隅で、小さな予感が蠢動している。  自分の正体さえ知らない何か  言葉のことはもちろん、命のことも、人間のことさえ知らない何かが  与えられたばかりの力を使って世の中に言葉を放った。 「この小説は、AIが書きました」

コメント

コメントはまだありません。