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バナナの皮殺人事件

昨今、バナナは低糖バナナが最適などと、どこぞのスポーツマンかぶれの剣士が触れ回っておるが、ヤレヤレ、甘さ控えめのバナナなど、一体何がいいのか?

バナナっちゅうものの本質を、全く理解しておらん。

まもなく、日本が生まれ変わろうとしとるっちゅうのに、何が悲しゅうて、まずいバナナを世に広めるのか?薦めるのか?

HEY!

YOU!

Do you want to eat a banana that is not sweet?

誰も、甘くないバナナを食いたいとは思わないだろう。

「嘆かわしい。 極めつけの馬鹿だな、あいつは。この日本っちゅう国をどこへ向かわせよう、導こうとしとるんか? のう、大久保どん、おしえてたもんせ?」

西郷どんは、もっちりとした甘味の強いフィリピン産の高原バナナを頬張りながら、大久保どんに尋ねた。

大久保「分からん。やはり、土佐もんの考えることは、さっぱり分からん! とんだ奸物じゃな! バナナのことも分からん坂本は未来を語り合える人物じゃなか! 斬るばい! もう、坂本を斬るしかなかばい!」

大久保どんは興奮のあまり、顔を真っ赤にし、その瞳からは大粒の雫がこぼれ落ちた。

西郷どんは、我が意を得たりとばかりに、大久保の体を胸の中に寄せ、強く抱きしめた。

西郷「分かるぞー、大久保ー。おいもぬしと一緒の気持ちじゃ! バナナのうまさも分からんようなまがい物の竜馬を捨て置けん! おいらの手でペテンの竜馬の首ば取るばい!」

大久保は、西郷の発言に感激し、ぐわんぐわんと体を揺らして、西郷の胸の中でむせび泣いた。

大久保「西郷ー、西郷ー! ぬしはおいの気持ちが分かっちょる! 大変よく分かっちょる! うれしかー!」

西郷「うんうん。大久保どん、わしらは親友じゃないか。殺ろう! 坂本ば殺ろう! しかしのう・・・坂本を斬るにしても、坂本は北辰一刀流の免許皆伝者じゃ、わしらの田舎剣法の薩摩示現流では到底、太刀打ちできんのじゃないか? 返り討ちに遭うんじゃないか? おいは痛いの嫌だぞう! 痛いのは嫌やー!」

西郷は、死にたくなくて、泣きだした。

大久保「それには良い策がある。バナナの皮を使えばよか!近江屋の女将にわいろを渡し、坂本の部屋の外にバナナを皮を置いとくんじゃ。床にこっそり置いとくんじゃ。バナナの皮に気づかず、踏んだ坂本はスッテン転ぶ。 そこを斬りつければ、さすがの北辰一刀流の使い手の坂本も、イチコロだ。」

西郷「さすがキレ者の大久保どんじゃあのう。でも、わしらが殺ったとなれば、いくら天下国家のこととしても、わしらの評判が落ちるんじゃないか? 坂本は、司馬遼太郎が主人公にして本も書いとる。わしらが人気者の坂本やったことが知れたら、大衆を敵に回すことにならんか? わしは嫌われとーないぞお、世間に嫌われとーないぞお。」

西郷どんは、名声や人心を失う不安にかられ、また泣き出した。

大久保「泣くな! せご(西郷)どん! 新選組を使えばよか! 三日後、坂本がお忍びで近江屋に泊まる、っちゅうて、近藤の耳元でささやいだら、単細胞の近藤のことじゃ、目の色変えて飛んでいきよるわ。わしらの手を汚さんでも、血の気の多い新選組に襲わせたらよか!」

西郷「さすが大久保どんじゃの! 黒いアイデアじゃ!」

大久保「ふふふ」

数日後、坂本龍馬は近江屋で命を落としたのだった。

龍馬が倒れたその足元には、『Dole』のシールが付いた最高級バナナの皮が転がっていたそうだ。

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