日常 | 文字数: 812 | コメント: 0

舞花×靖

「それでね、キャラという事で言ったらね」 中嶋舞花が言った。 「昔って、『カワイイ』はいけない、て思われてたと思うの」 今日は御堂も顔を出さず、部室には俺と舞花の二人っきりだ。 思えば、こんな風にリラックスして舞花と話すのは、2年ぶりくらいだ。 「どういう事?」 それにしてもいきなりの話題の飛びっぷりに俺はついて行けない。 中学の頃と性格が変わったなあ、と思いかけて、いやいや、あの頃も中身はこうだったのに、他人への怖れがそれに蓋をしていたんだ、と思い直す。 どんなにぶっ飛んでいても、彼女が思考のままを自由に話せる気持ちでいるのはいい事だと思う。 「『カワイイ』は、どこか『頼りない』『弱い』と同義で、それを騙る事は一種の詐欺行為だと思われてたと思うの」 「…はあ」 「だから、頭のいい人とか、なんて言うか、欲望の強い人、野心家?なんかがカワイイ見た目を装うと、『ぶりっ子』と言われて非難された」 「ああ、そういう話」 「でも、今は見た目可愛くて裏表あるキャラってよくあるでしょ?」 「ああ、そうだな。うる星やつらのランちゃんを嚆矢として、今やキャラ付けのメイン要素としては弱いくらい、何ならピンク髪ツインテロリときたらサイコパスを疑えってくらい一般的だ」 「だよね。 ぶりっ子、なんて言葉もほとんど死語だし」 ひと時の沈黙。 俺には彼女の始めたこの会話の目的地が見えない。 「だからね」 彼女は机の上のUMAフィギュアを指先で弄びながら言った。 「私が黒髪ロングなのも、中学の時オサゲメガネだったのも、別に詐欺じゃないって話」 「何だそりゃ」 「またこうしてクボチンと仲良くなったから、ばれる前に言っておこうと思って。 私、…野心家だから」 「野心家なの?」 「うん」 そして彼女はあの一見イケイケナイバディギャルの名を挙げた。 「きっときりんちゃんよりずっと」

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