旧同タイトル | イベント: 同タイトル | 2018年10月 | 文字数: 744 | コメント: 0

バナナの皮殺人事件

仕事から家に帰るとバナナの皮が死んでいた。 * * * 思わず玄関で立ちすくんだ。どうして、何故バナナの皮が赤い血のようなものを流して倒れているんだ?ゴミ箱を見ればトマトジュースなのは一目瞭然だったが、それにしても理解ができない。 そして呆然とする俺を見て、妻はニヤニヤと笑っている。 「ふふふ、どうしたの名探偵。お待ちかねの事件よ?」 妻の仕業みたいだ。いきなり犯人が分かってしまった。しかし… 「訳がわらかないから迷宮入りだな」 「そんなバナナ!ちゃんと推理してよ!」 仕事の鞄を渡して一旦部屋に着替えに入る。 「先に風呂に入っていい?」 「熱々にしておいたわよ」 「熱湯なのか…水で少しうめてから入ることにするよ」 折角なので適温になるまで推理してみることにした。 妻は何がしたかったのか。 そもそも何故バナナなんだ。昨日買ったが俺は食べてない。妻も特別好物だったワケでは無かった以上、怨恨(食べ物の恨み)の線は薄い。 何か悪いことをしただろうか。悪だくみをするのは大抵妻なので、少なくとも身に覚えがない。 そもそもどうしてバナナの皮なんだ? バナナを買ったのが昨日のことである以上、バナナにメッセージが込められている場合は今日の出来事に限定される。俺が関わるとしたらさらに今朝に絞られて……… 俺は風呂上がりに、妻に謝ることにした。 「……朝ごはん食べてなかった。 あの朝食用のバナナを"殺した"のは、俺だったってことか」 「早起きして作ったんだけどなぁ…超ショックだったんですけど。朝食だけに…なんちゃって」 妻はチラチラと俺の方を見つつ、そのひと言を待っていた。 「…ゴメンなさい」 「よろしい。さて、晩ご飯にしようね」

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