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Chapter1 遭遇②

 「うぅ…、へへ…、やっぱ噂通りだな。あんた…。」
 「はぁ…、はぁ…。」
 手強い相手だった。
 途中で三角飛びしたり、宙返りして避けたり、何かと厄介だった。
 照り付ける日差しや、結構動いたせいか、汗がだらだらと流れてくる。
 とてもじゃないけど、止まりそうにない。
 「ま、おかげで楽しい決闘ができて、俺も満足だ。
 だが、次は負けねえからな。俺の顔覚えとけよ!

 …んじゃ!!」
 そう言うと、青年は行ってしまった。

 「…とんだ見掛け倒しだったな…。」

 「お姉ちゃん!大丈夫?」
 戦いが終わると、若葉が駆け寄ってきた。
 「うん。問題ないよ。…ちょっと手こずったけどね。」
 「それよりも今の人…、すごい動きしてたよね。武闘家か何かかな…。」
 「…まあそれよりも、動き回ったらお腹減っちゃった。どこかに食べに行く?」
 そう言うと、若葉はうーんと悩み込む。
 まあ、そうすぐ思い付かないか…と思ってた。

 「じゃあ、久しぶりに牛丼でも食べに行く?」
 「…え?」
 「お姉ちゃん、ずっと食べたいって言ってたでしょ?だから!」
 ああ、そういえばそんな事言ってたっけ。
 …にしても若葉、そんな昔の事よく覚えてたね。
 「そうだね。じゃあ牛丼食べに行こっか。お金はお姉ちゃんが払うよ。」
 「うん!」
 まったく、いつになっても可愛いなぁ。若葉は。
 そんな事を思いながら、私は若葉と手を繋ぎ、牛丼屋へ向かった。
 そこで、最悪のトラブルが起きる事を知らずにーーー。



 現在、牛丼屋。
 「お、空いてるね。」
 「なんか珍しいね。いつもは混んでるのに。」
 「今日はたまたまじゃない?とりあえず、券取ろっか。」
 私はそう言うと、発券機へと足を運んだ。
 ここの牛丼屋は前払いである。
 そこで何を食べようか考えていた時。
 「お姉ちゃん。」
 「ん?」

 「お姉ちゃん…、結構胸元膨らんだ?」
 「…は?」
 私は若葉の話している事に、思わずキョトンとした。
 「お姉ちゃん身長も伸びたし、胸元も…。」
 「…ちょっと、それはここで話すものじゃないよ。」
 「えぇ、だって気になるじゃんか。」
 …いや、いくら妹でもここではそんな事話し難いって。
 「はぁ…。後で教えてあげるから。」
 「あぁ、そう…。」
 まったくもう…、若葉ったら…。


 「ん、うま。」
 カウンター席で、パクパクと肉やご飯を口へ運ぶ私と若葉。
 今思えば、久しぶりの外食だ。
 何が物を食べると、何故か父さんと母さんの事を思い出す。
 でも今は、私と若葉の2人だけ。
 少しだけ寂しい気もした。
 「お姉ちゃんの牛丼、ちょっとだけ貰ってもいい?」
 「ん?別にいいよ。ほら。」
 こういう所は、昔と変わらない若葉のおねだり。
 私は、若葉のその部分は別に嫌いではない。
 寧ろ可愛くて好きな方だ。
 「うん!美味しい!」
 「そう?なら良かった。」
 私が若葉の笑顔を見て、微笑んだ。

 その時だったーーー。



ウウウウウゥ……
 突然、外からサイレンの音が鳴り始めた。
 何か事件でも起きたのだろうか?
 「…?何だろ?」
 「…ちょっと見に行こうか。」
 そう言うと私は牛丼を一気に食べ、席を立ち上がる。
 そして、サイレンが鳴った方へと向かうーーー。

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