恋愛 | 文字数: 1473 | コメント: 0

ホワイトデー ~チョコに秘めた想い~

「何これ?」  彼から「はい」と言われ渡された、白の包装紙がされてある箱を見ながら訊く。 「今日、ホワイトデーだから」 「ああ、バレンタインのお返しって訳ね」 「そう」  私は、包装紙を綺麗に剥がし、箱の中を確認した。  中には24個のチョコが入っていた。 「バレンタインの返しが、チョコって」そう言いながら、1個食べる。 「しょうがねえじゃん。他に思いつかなかったんだから」  彼も1個食べる。 「え! 食べるの?」 「いいじゃん。俺が買ったんだし」 「まあ1人で食べるのには少し多いからいいか」渋々了承しながら、また1個食べる。 「なあ、ゲームしない?」 「ゲーム?」 「最後の1個食べたら負けゲーム」 「懐かしい。昔、そういうのやったなあ」  私は、2つのコップにコーヒーを注ぎにキッチンに行った。 「最大で食べていいのは3個まで」 「それで負けたらどうするの?」 「じゃあ、1回だけ何でも言うこと訊くってのはどう?」 「いいねー。何、頼もうかな」 「もう。勝ったっ気でいるのかよ」  3個ほど食べてはいたが、改めてじゃんけんをし先攻後攻を決め、私からゲームがスタートし、まず初めに3個ほど手に取った。 「おお、いきなり3個取るかあ」 「このチョコ美味しい」 「じゃあ、俺は1個で」  次に私は2個取り、彼も同じく2個取った。  その後もゲームは続き、私が1個だけ口に入れると、彼は3個口に入れる。  そしてようやく気付いた。気付くのが遅過ぎたくらいだ。もう私の負けは見えていた。  私が2個取ると、彼も2個取る。 「もう私の負けだね」 「でも最後までやろうよ」 「無理なお願いはダメだからね」 「分かってるって」  私は1個口にし、彼が3個口にし、とうとうラスト1個を私が口にする。 「!?」  俺はホワイトデーに何を渡そうか悩んでいた。  付き合って4年目。今までにもホワイトデーのほかに、誕生日やクリスマスに、色々と渡してきた。  女性はいいよ。バレンタインには、チョコ一択なのだから。  そして出た結論が、1周回ってのチョコだった。  彼女も俺も甘いもの好きだし、そうと決まれば、とスマホを手にしとある人物に電話をかけた。 「今、話せるか?」 「全然。ホワイトデー前のつかの間の休日を過ごしていたところ」 「そんなお前に頼みがあってさ。チョコ作って欲しいんだ」 「じゃあ、うちに買いに来いよ」 「今から、家に行ってもいいか?」  そして、パティシエをしている友の家に、チョコ以外にもう1つ頼みごとをしに向かった。 「ちょっと待って、チョコの中に何か入っている」私は口の中から硬い何かを取り出した。「指輪?」 「そう。指輪。びっくりした?」 「どうすんの? 飲み込んでいたら」 「飲み込まんでしょう」 「なんで指輪?」 「ホワイトデー何がいいか悩んでさ。今まで、色々とプレゼントして来たし、今までに渡してないもの何かなあ、と考えたら、これが思い浮かんだ」  私は口から取り出した、チョコが付いた指輪を、水道で綺麗に洗った。 「それで私に何をお願いするの?」1カラットにも満たないダイヤが嵌め込まれた指輪を、ライトに翳す。  彼は、私が手にしていた指輪を取り、水で濡れた左手をそっと掴み、指輪を薬指に嵌めながら「結婚して下さい」と口にした。  私は、彼の目を見ながら頷くと、チョコが付いた唇で甘くて淡いキスをした。

コメント

コメントはまだありません。