旧同タイトル | イベント: 同タイトル | 2020年7月 | 文字数: 699 | コメント: 0

アホ毛を切って

私には、頭の上の右側にピョンと跳ねた髪の毛、いわゆるアホ毛がある。 また頭の上の左側にも、ピョンと跳ねた髪の毛、いわゆる天才毛がある。 右と左に跳ねた髪の毛を持つ私は、アホと天才が混ざり、それらが中和されて、至って普通って訳だ。 そこで、思い付いた。 もし、この右に跳ねたアホ毛を切ると私の中からアホが抜けて、天才だけが残るのではないか?、と。 この試みが成功すると、私は天才になれる。 それは、とても嬉しいことだ。 さっそく、机の引き出しからハサミを取り出し、頭の右に跳ねたアホ毛にハサミを近づけた。 いや、まて! この試みは軽率で、危険ではないか。 今、右に跳ねた髪の毛をアホ毛だ、としているが、実は右の方が天才毛で、左に跳ねた方がアホ毛だったら、どうなる? 私は誤って天才毛を切ることになるではないか! そうなると、残るのは頭の左のアホ毛だけで、私の中から、天才だけが抜け落ち、100%のアホになってしまう。 それは、恐ろしいし、とても困る。 アホになると、それはもうアホなので、何もアイデアが思い付かず、もしかすると二度と普通にも戻れないかも知れない。 と言う訳で、私は先ほど取り出したハサミを引き出しに戻した。 庭先を見ると、光が差し込んでいる。 見上げると、先ほどまでザーザーと激しく降っていた雨が上がり、太陽を浴びた大気が、天空で七色のアーチを作っている。 私は、右と左に跳ねたアホ毛と天才毛を前後に少し動かし、背から優雅な黄と黒の模様のヒラヒラを大きく広げると、空に向かって飛び跳ねた。

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