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Chapter1 遭遇③

 「何かあったんですか?」
 「…ああ、たった今このビルで殺人事件が起きたんだ。今その現場に向かっている所であってね。」
 目の前にあるのは、8階くらい建てられたビル。
 この中で起きたのだろうか。
 「犯人は今、どうなってます?」
 「それがな…、まだ捕まってないらしいんだ。相当逃げ足が速いらしくてね。」
 「あの、実際どうなってるか見せてくれませんか?」
 「え?お姉ちゃん…?」
 会話だけではわからないと思い、私は現場に入ろうとする。
 普通はダメだけど、どうしても気になってしまう。
 「いやいや、一般人を現場に入れる訳にはいかないよ。」
 「もしかしたら、犯人の特徴に繋がる何かがあるかもしれません。だから、お願いします。」
 「しかしだなぁ…。」
 うーん、やはり難しそうか…?
 「とりあえず、何か証拠が出れば俺が調べに行くけど…、それでもいいかい?」
 「ええ、でも…。」
 調べに行かせるのはなぁ…。
 でも一般人が入れないのなら、そうしても良さそうだけど…。


 「あら?なら私が案内しましょうか?」
 突然、後ろから女性の声が聞こえた。
 そこには、とても綺麗で上品そうな女性が一人立っていた。
 「え、でも…。」
 「私はこのビルの関係者なの。いいでしょ?」
 「いや、関係者だからって、現場に案内させるのは…。」
 「もし何かあったら、私が責任取るから。」
 なんてストレートなんだろう。
 思わず見入ってしまった。
 「…いいんですか?」
 「ええ。あなたはお巡りさんのお手伝いをしたいだけでしょ?」
 「お手伝いというか…。」
 「まあいいわ。付いて来なさい。」
 本当にいいのか。でも中が気になってしょうがない。
 私は、その女性に付いて行く事にした。



 ビルの中は、いかにもオフィスって感じだ。
 …という事は、ここは株式会社か何かかな?
 そんな場所で殺人事件なんて、普通は考えられない。
 「…ここが殺人現場ね。」
 着いたみたいだ。
 「あ、ちょっと、勝手に入られちゃ困りますよ。」
 「いいのよ。私はここの関係者だから。
 何かあったら、私が責任取るわ。」
 とりあえず、中に入らせてもらった。

 そこには、一人の女性の死体が転がっていた。
 「うわぁ…、酷い…。」
 それを見た若葉は、背筋を凍らせて呟いた。
 死体には胸に銃創があり、腹に4箇所刺傷が残っている。
 恐らく犯人は銃で女性を撃った後、倒れた好きに刃物で刺した…という事になるかな。
 「犯人の特徴とかはありますか?」
 「ああ、たった今調べたけど、こいつみたいなんだ。」
 警察がそう言うと、犯人の写真を私達に見せた。

 「うーん…、見た事ないですね…。」
 「名前は「大屋 佐江子」。どんな人物かは、具体的にはわかっていない。」
 「そうですか…。」
 とりあえず、私も写真の中の犯人を探してみる事にする。
 「この写真、私が貰ってもいいですか?」
 「え?別にいいが…、何するんだい?」
 「理由はないけど…、でも、もしも見つけた時に通報できるかと。」
 「大丈夫なのか?一般人に任せる事は…。」
 「いえ、こう見えて事件には慣れてます。なので、お願いします。」
 「…そこまで言うなら…。」

 そして私は写真を頼りにして、犯人探しを始めたーーー。



 「あのさ、お姉ちゃん。」
 「ん?」
 若葉が何か言いたそうにしている。
 何だろう?

 「この写真の人、私知ってるよ。」
 「…え?知り合い?」
 「ううん。というか、お姉ちゃんが気付いてないだけだよ。」
 若葉の口から語られるその言葉はーーー。



 「この人、さっき私達を案内してた女の人だよ。」



 「…!…なんだって…!?」
 さっきのあの綺麗な女の人が…!?この事件の犯人…!?
 でもそんな事が…。

 「写真見た時、何か見た事あるなーって女の人を見てみたら、その人が犯人だった。
 あの人はきっと、自分が被害者の女の人を殺した犯人だっていう事、隠してたんだよ。」
 「…嘘…でしょ…?」
 どうやら若葉には、さっき私達を案内していた女の人が犯人だと認識していたらしい。
 バレないようにサングラスで変装していたって事か…!
 くそ!何であの時気づけなかったんだ!

 「…とりあえず、そいつを探そう。まずはそこから。
 このまま黙っていられないから。」
 「わかった。」
 私と若葉は、もう一度会いに行こうと女の人の所へと走り出していった。

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