旧祭り | 文字数: 2078 | コメント: 0

八海山


「また、つまらぬ一年を過ごしてしまったな」

山野 大木は、この一年の間、何もしなかった自分に呆れていた。

しかし、今年からは、抱負を掲げない事にしていた。

大木は、どうせ自分が奮起しないこと、そして無限ループに入っている事に気付いたからだ。

[大木の無限ループ]
①年末、何もしなかった自分に呆れる
②反省する
③今度こそはと、来年の抱負を掲げる
④日々の仕事に忙殺され、抱負を忘れる
⑤休日にはゲームに没頭する

「結局、俺は何もしないのだ。反省?そもそも反省って何だ?俺は誰に対して悪いと思っているのだ?そうか、分かったぞ!気持ち新たに抱負を掲げた一年前の自分に対してだな。俺は、毎年、一年前の自分に恥ずかしく思い、反省していたのか?アホらしい。もうやめよう、毎年毎年、自分に謝るのは!どうせ、やりもしない抱負など最初から掲げなければ良いし、そうすれば反省もしなくて済む。毎年、ただただ怠惰に過ごした自分に呆れ返るだけにしよう!そうだ!、それが正しい。俺はダメ人間で、年末や年始に抱負を掲げることをしてはイケナイ人間なのだ。」
大木はそう悟り、今年からは抱負を掲げないことにした。

その後、大木あるアイデアを思いついた。

「そうだ!良いことを思いついたぞ。『抱負を掲げないこと』を今年の抱負にしてはどうか?おお、新しい発想だ!これだと、ダメな俺でも達成可能だ!」

大木は直ぐに吹き出し、頭を左右に数回振ると、「やはり俺はアホだな」と呟いた。

また大木は、どうやら自分と言う人間は、自分に対してこの調子であるから、きっと他人に対してもその様な目で見ている、気がしてきた。

「俺は、知らず、何かを成したか、否かで、その人を値踏みしているのではないか?

何も成していない人は駄目人間
何か成した人は普通の人間
大きなことを成した人は立派な人間

の三色に人を分類して、密かに他人を尊敬したり、小馬鹿にしたり、しているのではないか?」

大木は、コタツに入り、このように思い巡らしては、コタツ台の上のコップに銘酒八海山を注ぎ、グビグビと飲んでいた。

「げっふ!は〜あ、俺は俗物だ。さながら、現代が産んだ妖怪や怪物だな。まあ、俺が妖怪だろうと、怪物だろうと、それ以下であっても、それが俺なのだ。別に良いじゃないか?」

大木は、空になったコップに酒を注ぎ足し、下らない思考をやめて、テレビに目をやった。

紅白歌合戦とか言う番組で、派手な服を着た若者達が大勢で歌って踊っていた。

大木は、思わずテレビに向かって怒鳴った。

「おい、チンピラども!何をはしゃいでやがる?ヘラヘラと笑いやがって、皆で俺を馬鹿にしてるのか?!」

独身40半ばのの大木は、リモコンを乱暴に操作し、テレビを消すと、コップ酒に口につけた。

「くぅ、うめえや、八海山は!五臓六腑に染み渡るぜ!お前だけだな!俺を理解してくれるのは!俺はお前の美味さを理解している。長い付き合いだから、きっとお前も、俺のことを理解してくれているはずだ。愛してるぜ、八海山!」

大木は一升瓶に向かって、気味悪くウインクをした。

大木は、八海山って何処にあるんだろう?、と気になったが、そんなことはもはやどうでもよくなり、コタツ台にうつ伏せになり、寝入ってしまった。

「大ちゃん、大ちゃん! 起きて!」

まぶたを開くと、そこには見知らぬ女性がコタツに座っていた。

大木「ひい、だ、誰だ、あんた?」

見知らぬ女性「誰って、私よ、私。八海山よ!私のこと愛してるって言ったでしょう。だから、こうして出てきたのよ」

大木「俺は、遂に頭がいかれたのか」

大木は、首を捻って、少し考えたが、狂ったのなら、それで良いと思った。面白いので、突然現れたこの妙な女に少し付き合ってみることにした。

大木「おい女!お前、どこから来た」

八海山なる女「どこって、新潟の魚沼だよ」

大木「魚沼ってコシヒカリ作ってる所だな。そうか、それでそんなに美味いのか?」

八海山なる女「えっ!?キャー、それ最高の褒め言葉。その通り!魚沼のコシヒカリで作るから、美味しいお酒になるのよ。」

大木「ふーん。で、お前は酒なのか?なぜ酒が、人の形をして、喋れるのだ? また、なぜ、俺の部屋に現れた?」

八海山なる女「そう矢継ぎ早に、質問攻めしないで!せっかくだから、ゆっくりとお話ししましょう!」

大木「そうは言ってもだな、こうダラダラした展開は書いてる側も結構シンドイのだ。文字数も気になってきたし、そろそろ五つ目の残るキーワードを入れたい」

八海山なる女「え?大ちゃん、何言ってるの?意味分かんない?もしかして残るキーワードって、[プルプル、元号]の事を言ってるの?」

大木「ありがとう、八海山!さすが心の友だ!」

終わり

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