保育士
男A「自己紹介します。俺は小林寺陀妖(しょうりんじだよう)……ヒュー、ヒュー! ありがと、ありがと。で、こちらは……」
男B「ぼくの名前はプルプルで~す!」
男A「なんだ、そのプルプルって…。お前、また新しい名前に変えたのか? カタカタの芸名はよせっていったのに…芸風も変わっちまうじゃないか!・・・って相方の名前を気にする暇があったら、自分の名前に誇りを持とう!」
男B「いきなりだけど、ぼく、保育士やってみたいんだ」
男A「おう、いいじゃないか。女性活躍の現代社会ではますます人手が求められる仕事だ。お前も子どもが好きならいけるんじゃないか?」
男B「いや、僕、ママの方が好きなんだ」
男A「あぶないな、それは…。まあ、いい。じゃ、ちょっと俺が園児の役をやるから、お前、保育士やってみろ」
男B「はい、じゃあ、みなさん、お昼ご飯にしましょう」
男A「ハーイ! ご飯だ、ご飯だ、うれしいな。今日のお弁当のおかずはなにかなあ…たまご焼きかなあ…」
男B「あ、ちょっと、だよう君! まだだよ、まだ! インフルエンザが流行っているんだから、ちゃんと手を洗ってうがいしてからだよ~。その後、ご飯です。食べる前は皆でいただきますしますよ~」
男A「わかった、わかった、なにが『だよ~』だ…早く食べたいのに、めんどくさいなあ・・・って思うよりも、その分、楽しい時間が長くなったと思えばいいんだ。そうだ、俺の唯一の楽しみは昼飯だけなんだ……時を戻そう」
男B「なにごちょごょちょ言ってるんだ? さあ、みんな、僕の方を見ながらマネをしてうがいをしてください。声を出して、ハイ、ガラガラガラ・・・」
男A「ガラガラガラ…ごっくん、あっ、飲んじゃったあ」
男B「ばかもの! なんで飲みこんだあ! 僕は飲みこんでないだろう!」
男A「お前がそっち見ろなんて言うから、ガラガラしながら首をお前の方に動かしたら喉に入ったんじゃないか!・・・って大声で叫びだすような園児は現在の日本にはまずいないだろう。5歳頃からいちいちキレてたんでは人生、身が持たない。ここは俺が辛坊すればすむことだ」
男B「はい、それじゃあ、ご飯を食べましょう。合掌、いただきま~す!」
男A「いただきま~す! むしゃむしゃむしゃむしゃ、ああ、おいしかった」
男B「さあ、次はお昼寝だよ~!」
男A「あんまり眠たくないけどなあ。俺、テレビみてちゃいけないかな」
男B「ばかこくでねえぞ~!どこの園児がひとりだけ昼寝しないでテレビみとるだかあ?」
男A「じゃ、まあ眠ったふりして寝てるか…」
男B「これ、ちゃんと眠りに入らないとだめだよ~!」
男A「おい、その『だよ~!』っていうのはやめてくれないか?眠れないものは眠れない。無理なことは無理」
男B「子どもは飯くったら眠るもんだ。だからその気になれば眠れるはず。さあ、やってごらん」
男A「そうか、そんなに俺を眠らせたいのか。よし、それなら睡眠導入剤を使ってみよう」
男B「だめだめ!なにかあったら園長が責任とらされるから、薬は飲まずに眠りなさい」
男A「だから、それができたら苦労はしない・・・って、あきらめる前に、この際、いい機会だから自己催眠を試してみよう。トレーニングのつもりで何度もやってみよう。これがうまくいけば警察に取り調べられた時に使えるぞ。眠りにおちた人間を取り調べることはできない。ブハハハハ…」
男B「それじゃあ、はい、お昼寝の時間が終わりましたあ」
男A「なんだ、もう終わったのか」
男B「あれ?」
男A「あ、あれ…って、なんだ?」
男B「君、誰? いつからそこにいるの?」
男A「なんだ、なんだ、おい、また妙なこと言うじゃないか! 俺はさっきからずっとここで寝てたんだよ」
男B「寝てた。どっか具合でも悪いのか?頭でも打ったのか~?」
男A「いや、そうじゃない、そうじゃないだろう…、お昼寝の時間だから寝てたんじゃないか」
男B「うそ~!」
男A「うそ~!ってなんだよ!俺はずっとここにいたって」
男B「そこ、君の席か?」
男A「そうだよ、ここは俺の席だよ。元号が平成から令和になる前からず~っと、ここが俺の席だ」
男B「うそつけ、くっさい匂いを漂わせて。みんなしかめっつらでお前を見てるじゃないかあ。お前はどっかから紛れ込んできた浮浪児だろう?」
男A「ふ、ふ、ふろうじって、いつの時代の話なんだ」
男B「浮浪児って言えば昭和に決まってんだろ。どうせ、タイムスリップかなんかしてきたんだろう?」
男A「か、なんか、って…、タイムスリップってそんなに安易に使っていい単語じゃないぞ! ほんとに保育士さん、俺を知らないのか?」
男B「知らんからきいてるんだ。昭和の時代のどこから来た人間か?ってきいてるんだよ」
男A「どっからって、俺は園児なんだから平成の生まれで、自宅から来たに決まってるじゃないか! 朝、おふくろに連れられてやって来たんだよ・・・と興奮して喋るのは健康によくないばかりか、ますます怪しまれて保育園やめさせられたら親が困る。ここは笑って真実を語るべきだ」
男B「さ、正直に言ってごらん。君は誰なんだ」
男A「私は歴史に生まれた歴史の男でございます」
男B「なんだ、山根会長でしたか?」
男A「もうええわ」
コメント
コメントはまだありません。