旧同タイトル | 文字数: 816 | コメント: 0

『ようこそ』が止まらない

『☁ฺ』
『ようこそ』
『♔ ♕ ♖ ♗ ♘〇〇〇〇様』

「はいどうも」

ムービングウォークが稼働し、『彼』が乗った道が進み始める。

彼は笑みを浮かべ、悠々と塵一つない道を進む。

右を見れば、美女が

『ようこそ』

左を見れば、グラスを磨くバーテンが

『ようこそ』

と言葉を投げかける。

彼の後ろのカートには大量の食材と服が次々とアームで運ばれ、彼は胸ポケットの中のカードを取り出すこともなく磁気により支払いが終わる。

ムービングウォークが彼を二階に誘導し、ある映画監督の最高傑作が上映されている映画館へ案内する。

『ようこそ』

「はいどうも」

もぎりは何も確認せず彼を通し、彼はゆで卵のような形のそれでいてどこまでも沈み込む最高クラスの席から2時間30分映画を鑑賞した。

鑑賞後、彼はそのままムービングウォークに運ばれ、5階のアダルトエリアに入った。

『ようこそ』

そこでは、様々な美女が彼を誘惑し、必要とされることを求めた。

「はいどうも」

しかし、彼はそのまま床から降りることなくそのエリアを後にする。

そのまま一つ下の階へ行くと、そこには数トンに及ぶ膨大な量の合成な食事が彼の為だけに用意されていた。

シェフが頭を下げる。

『ようこそ』

「はいどうも」

彼はそう返し、旨味がそのまま香を持ったようなにおいの中食事を物色しながら進んでいった。

そして結局、床を降りることなく、ホビーエリアへ、次はスポーツエリア、その次は……。

自然光を模した人工灯が夕暮れを演出するとき彼は入り口に戻った。

そこでは言葉を感知して最高のサービスを提供する、数千台のアンドロイドたちが、

人の肉声を録音し右腕を上げているマネキンの次の言葉を待っている。

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