日常 | 文字数: 1088 | コメント: 0

小さな駅

小さい駅だった。駅は木製でできている。自分はその小さい駅の中に入る。
 中には映画で見たことあるよな駅員が切符を切るような場所が見えた。数歩だけ進む。ちょうど駅の真ん中にいるのだろうか?
 ふと光景が変わった。一人の男がピンと背筋を伸ばして立っていた。
 服が軍服だろうか? 昔の日本軍の軍服を着ていた。
 男は自分を見ていた。表情は真剣だった。自分も男を見る。
 ほんの数秒だろう。
 沈黙の中に急に無数の声が出てきた。

 バンザイー バンザイー

 駅の中に木霊する。その中で男は口が開く。
 名前を言った。この男の名前だろうか?

 お国ためにー 天皇陛下のためにー


 男は言い続ける。それに合わせて男の名前とバンザイーが続く。

 自分には理解できない世界。かつてそのような激しい時代があった。それだけの感想しかない。
 私は足を進める。駅内に木霊する声たちを無視する。そして真面目な顔して大きな声を出してる男を横を通り抜ける。

 千恵子

 男の小さい声が聞こえた。自分は一瞬だけ止まる。

「もう少しで会える」

 そして足を進め木製の改札口を抜ける。
そして駅の停留所に出る。

 一面が真っ白だった。見えるのは路線とコンクリートの停留所。

 自分の中で何かがざわついた。それを感じながら歩く。
 白く色のない風景。なんの感情も抱かない。
 停留所に奥に何かが見えた。さっきの軍服を着た男である。
 自分の中でざわついた物が激しくなる。そして何かがすっと透けた。そのまま女性が男に向かって走る。
 男は大きく腕を広げる。女性は男の胸に飛び込む。
 自分はその光景を見ていた。いつもは何も感情を抱かないかが、ときおり感情が激しく動くことがある。
 自分は背を向け小走りになる。
 
 アリガトウゴザイマス

 男女の声が耳に聞こえた。自分は聞こえないふりをして駅に入り改札口を抜け駅の出入り口に向かった。

 魂の運び屋

 この世で成仏できない霊を自分に取り付かせてあの世に送る。
 ほとんどが恨みや怨念の霊ばかりだ。それらに感情を抱くと取り込まれてしまう。
 だから無感情でやっている。
 時折、こんな場合もある。どんなにいい場面でも感情を抱けば取り込まれあの世に引きづりこまれる。
 自分は駅を出て振り返る。木製の小さい駅。それはこの世とあの世を分ける境界線。
 自分は顔を戻して今度はゆっくりと足を進める。次の成仏できない魂を運ぶために。
 

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