Chapter4 血戦③
《涼介視点》 ~1ヶ月前~ 俺は姉貴達と出会うまでは、ずっと大屋軍の手下でいた。 俺はその時、あの大屋…佐江子様の一面を見てしまった。 それからが問題だった。 『西園寺、何してるの?出撃の時間よ?』 『……。』 『西園寺、聞いてるの?』 『…出撃はいいけどよ…。 俺さ、佐江子様のある一面見たんだよな。』 『…?』 ここで俺は、佐江子様のある一面ってのを暴露する。 『佐江子様はさ、手下にご褒美っつって、毎回手下とやってんだろ?』 『…は?』 『正直な事言ってもいいか?佐江子様は、あんな事して恥ずかしくないの?』 『…さっきから何言ってんの?ご褒美はご褒美でしょ? 任務で疲れた手下達を癒してあげるのが、主将である私の利権なの。 たかが恥ずかしいなんて、そんな事…。』 『主将なら何でもしていいのか?』 『…!』 『こんなろくでもねえ軍の中で手下とやってるなんてよ…。 まるで変態女教師とおねだり男子生徒じゃねえか。』 『西園寺…!』 『俺はあんな付き合いには御免だからよ…。 大屋軍、脱退するわ。』 『はあ!?』 『いくらご褒美っつっても、わざわざあんな事される義理はないんでね。』 『…ふん、あんただって求めてたじゃない。 いっつも私の近くにいる時、チラチラと私の胸を見てたじゃない。 本当はあんたにもやらせてあげたかったのに…、チャンスを無駄にしたわね。残念だわぁ…。』 佐江子様にそう言われた俺は、彼女を睨むように見た。 『…俺がそんな目でてめえを見てたと思うか?』 『…はあ?』 『正直ひいてたよ。てめえのそういう所。 いつもは力強く手下を慕ってたってのに、その裏の姿は紛れもねえ変態だって事によ。』 『……。』 ここで俺は、決意したんだ。 『だからよ、俺はこの軍辞めるから。そこんとこよろ。』 俺がそう言うと、佐江子様は怒りが混み上がったせいか、俺を睨んだ。 『…あんた、そんなに死にたいの?主将にそんな大口叩いて…。 覚悟はできてるんでしょうね!?』 『……。』 そうだよ、佐江子様は…。 言う事を聞けない手下には殺意持ってんだ。 『駆け出しの頃のあんたはとっても可愛かったのに…。 今は言う事の聞かない野良犬ね!』 そう。俺は野良犬だよ。 あんな一面見たら、流石に俺もひくよ。 そこで俺は、ある提案をしたんだ。 『…じゃあこうしようか。 今から俺は窓から外に出る。てめえは逃げてる俺を追いかける。』 『…なに?』 『…「人生最後の鬼ごっこ」って訳よ。 命張って逃げてる俺を捕まえてみろってんだ。』 バリンッ!! 『西園寺!』 俺は窓に向かって走り、飛び出した。 死ぬような高さではないが、外に出る事は変わりない。 『んじゃ、一旦さよならだな。』 『…!おい!!西園寺!!!』 『追いかけるの諦めて逃げんじゃねえぞ!俺とてめえの勝負だ!! 俺を殺すまで鬼ごっこは続くぜ!あばよ変態主将さんよ!!』 『西園寺!!!!』 『あのクソガキ…! 絶対にぶっ殺してやる…!!』 ここまでが、俺と佐江子様…大屋の、関係だったーーー。 《奈那美視点》 …これが、涼介の真実だ。 「そうだったんだ…。それで今、大屋から逃げてるって事か。」 「ああ。お蔭様で、奴らは活動しまくってる。人殺しのな…。」 「というか、涼介のそのやり方も結構反抗的な気がするけど…。」 「そこはそっとしておけよ。あれしか方法なかったんだし…。」 「それもそうか。」 まあ、私もあんな軍には無理矢理にでも抜け出したくなる。 「だからよ、姉貴。姉貴も協力してほしいんだ。」 「……。」 「俺が奴らに捕まらないよう、俺の護衛を頼みたい。 もちろん、嫌なら断ってもいいが…。」 今の涼介の話を聞いて、私は思う。 涼介は、見た感じ荒くれ者だけど、根は良い奴だ。 初めて私を「姉貴」と呼んだ時は、最初は混乱したけど、今はそうでもない。 寧ろそう呼ばれて悪い感じはしないし、正直嬉しかった。 それから私は、涼介を弟みたいな存在と思っていた。 両親を亡くし、私の本当の家族は若葉だけだけど、涼介も家族のようなものだ。 だから…。 「ここまで聞いて断るなんて言うと思う?」 「…え?」 「わざわざ大屋軍から抜け出してここに来たんでしょ?涼介の事情がわかったら、尚更だよ。 あんたが死なないように、私達もサポートするから。」 私は、涼介が仲間に入ってから考えた。 本当のではないけど、涼介は…。 私の「家族の一人」だ。 「……。 フッ、馬鹿野郎だな。」 「馬鹿野郎はどっち?」 「さあてねぇ。比べもんになんねえや。」 そう言われて、私と涼介はお互い笑った。 私みたいな女は…、馬鹿でもいいんだよ。 「なあ、姉貴。」 「ん?」 「若葉はどこ行った?」 「…え?」 そういえば、若葉の姿がどこにもない。 「…!ひょっとして、まだ外に…?」 嫌な感じしかしない。 私は急ぎ足で巣から出た。 《若葉視点》 「うぅ~…!ん~…。」 ちょっと空気を吸いに、私は外に出ていた。 空は曇り空。 このまま太陽や月が出ないなら、私は嫌だな。 お姉ちゃんと再会して、巣から出た時の快晴を早く見たい。 大きな溜め息が出る。 ザッ…ザッ… 「…ん?」 突然気配を感じた。 用心のために神楽刀を持ってきておいて良かった。 私はすぐに刀を構える。 …でも。 パシュッ ザクッ! 「うっ…!?」 もう手遅れだった。 何かを打たれた。 「ぅぁっ…!」 誰かなのかを確かめる前に、私は神楽刀を弾かれた。 そして…、意識が遠のいていく…。 「捕 ま え た ♪」 聞き覚えのある声。 しかし、とうとう瞼が落ちていく…。 そして私は……。 何者か……、確かめられないまま………。 意識が…………、途切れてしまった……………。
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